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01-1 ■変化する住民と行政の関係と多様な担い手 地域づくりの主役は、誰なのでしょうか。最初に思い浮かぶのが行政です。しかしながら、人々の価値観が「経済的な豊かさ」から「心の豊かさ」にシフトし多様化していく中、行政が全ての公共サービスを提供することは、質的にも量的にも限界があります。例えば、暮らしの安心・安全の確保、賑わいの創出、環境保護などの今日的課題は、行政のみの力によっては解決することはできません。これまでのように行政に要望・要請するだけでは、地域課題が解決されない状況となってきているのです。厳しい財政状況の中でも、行政が効率的な行財政運営に努め、地域づくりに取り組まなければならないことは当然ですが、さらに、地縁組織、NPO、企業、大学などの多様な主体が「地域づくりの担い手」となり、行政とともに協働することが必要です。行政活動を監視する、行政に意見を述べるということから更に進んで、行政と協働し、自らが地域づくりに取り組んでいくことが必要になってきているのです。 地域内における担い手の少なさを悲観するのはやめましょう。「地域づくりの担い手」は地域内に限定されるわけではありません。例えば、体験型観光は、観光客という地域外の住民を地域づくりの担い手として取り込む試みであるとも言えます。 01-2 ■行政との連携 地域づくり活動を行うに当たって、行政との連携は重要なポイントですが、「自分たちは良いことをしているのだから、行政の支援は当然」という考え方から出発するとなかなか思うような成果は得られません。新たな行政投資を行うためには何かを止めなければならず、また、一つの活動に対しては様々な評価があり得ます。行政に対して批判的意見を述べることも必要ですが、これが行政批判に止まっていては何も新たなことは起こらないのです。行政の支援が活動の前提というのではなく、「行政との役割分担をいかにするのか」という観点から、連携体制を構築していくことが必要です。また、行政としても、多様な主体の連携をコーディネイトしていくことに今以上に力を注いでいくことが必要です。
01-3 ■担い手間の連携 多様な主体が「地域づくりの担い手」となり、個々に活動に取り組んだとしても、それだけでは、大きな流れにはなりません。個々の主体の活動には限界があり、また、それぞれの活動の内容や目的が一致するとは限らないからです。地縁団体とNPOとは活動の内容が違いますし、企業や大学などは、通常、地域づくり以外の目的をもって活動しています。 一方、地域の課題は様々な要素を含んでおり、その解決のためには多面的なアプローチが求められます。地域づくり活動を実のあるものにするには、多様な主体が連携することが必要となります。 しかしながら、多様な主体が連携して活動することは容易ではありません。連携のためには、活動目標の共有と、それぞれの団体にとってメリットが生まれるような仕組みづくりが必要となりますが、構想策定、連携のための組織作りから先に進まないということもあります。目標づくり、組織作りは重要ですが、地域づくりの連携においては、まずは何か活動を始め、その中で、緩やかな連携を模索しつつ進んでいくことが大切だと思います。 01-4 ■活動の継続 地域づくり活動が成果を上げていくためには、一定の期間が必要です。単発のイベントで効果がでるようなことは多くありません。活動は継続してこそ、意味があります。このためには、(1)リーダーの存在、(2)活動資金の確保、(3)住民の継続的な参加が大きな課題となります。 誰かが上手に音頭をとれば自発的に集まる人はたくさんいますが、自ら言い出す人、つまり「リーダー」はなかなか現れません。しかし、リーダーが現れるのをただ待っているだけでは、何も変わりません。まずは、できる範囲で行動することが必要です。一人でできることは限られていますが、一人ででも動き始めないと何も始まりません。活動の中で、リーダーは育っていくものです。さらに、他の団体のリーダーとの情報・意見交換やリーダーの相談相手となるような人材を確保していくことも大切です。団塊の世代の方々の地域社会への復帰にあたっても、いきなりリーダーとしての役割を期待するよりは、会社組織での経験を活かしたリーダーのサポート役としての役割を期待するのも一つの方法であると思います。
01-5 おわりに 地域づくりのためには、多様な担い手が連携・協働することが必要ですが、その仕組みは、地域のおかれた状況や目指すべき目標により様々です。行政、住民、地縁組織、NPO、企業、大学の具体的な役割はあらかじめ決まっているわけではなく、具体的な活動を通じて、築き上げていくしかありません。地域づくりの答えは地域の中にしかなく、また、活動するなかで創り上げていくものです。 地域を取り巻く課題は時代とともに変化していきます。活動によって築かれた連携体制こそが、地域社会が様々な課題を解決していく力、いわゆる「地域の力」となります。「地域の力」とは、財政的な豊かさではなく、人々が自ら知恵を出し、課題に向かい行動していく力であると思います。地域づくりにたずさわっておられる方々の更なるご奮闘を期待しております。
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vol.19 「コミュニティビジネス研究会」へつづく | |
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