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01-1 ■全国で最初に、地域づくりの事務局を県庁から外へ ――いろり塾の事務局が県から外に出たいきさつは? 佐藤●平成10年までは、県が事務局を担っていた。しかし、「地域づくりは、民間サイドから盛り上ってくるものが本物になる。また、盛り上らせるためにも縛らないで思いっきり頑張っているものを応援してゆくのが県」ということに転換した。 ――お金を生み出す活動ですか? 阿部●NPOにシフトしてきました。 佐藤●従来の地域づくり、まちづくりではなくて、経済的成果を生み出す活動を重視してきた。 ――いろり塾の予算はいくらぐらいなんですか。 阿部●事務費と事業費をあわせて225万円。事業費は半額負担です。自前で行うことが基本で、大きなイベントをやるとその分だけ持ち出しが増える。それが結構きつい。コーディネーターの研修会や地域づくり団体全国研修交流会に参加するのも、半額負担している。会議のお茶代は事業費には含めないけど、それ以外は事業として計算し、半額負担になる。それぐらいだったら、もらわないで自前でやっていた方が楽なのかなという話がよく出る。ネットワークに対する助成なので、構成団体は独自に自前で活動している。 01-2 ■事務局移管の課題 ――いろり塾ネットワークそのものはどういう活動をしているのですか。 阿部●交流会ですね。あとは対外的な活動です。全国大会に行くとか。交流会は年に1回、地域を回る形で行っている。 ――最初は広告代理店さんが事務局を受けていましたね。 阿部●1年半でしたね。全国大会をはさんで今やっているところに移したが、うまく機能していなかった。 ――事務局が代わった理由は? 阿部●事務局を担当していた人が地域づくりの実践者じゃなかったからなのかな。 佐藤●一緒にやっている仲間がいろり塾に出て行くと、情報交換とか、つなげ方とかもスムーズに行くんでしょうけど、まったく関わりがないと難しい。 01-3 ■目的を明確にした地域づくり活動 ――この地域のなかで、ここを拠点に活動していくだけで十分だとも言える。テーマによっては全県的なつながりで事業を行うこともあっていいと思いますが、無理して全県的なネットワークを維持していく必要があるのかどうか。 阿部●なんでもありの地域づくりではなくなってきている感じだ。NPOのように主目的を明確にした地域づくりが必要。そこに横のつながりが出てくる。そこにネットワークをくっつけていければいいのだろうけど、なかなかそれが動きださない。 地域自治ということを進める場合でも、これまでのネットワークの経験や知識は役に立つ。20年余地域づくりに関わってきたが、その経験知や蓄積を活かしていきたい。 ――阿部さんはどのような地域づくりに関わってこられたんですか。 阿部●一番最初は青年会を立ち上げた。デザイン会議を立ち上げて、バレー大会をやって、広告を集めて、その中のフィールドで大きいトランプを作って大会をやったりとか、まちを、青年をフィールドにした地域づくりをやってきた。それから、地区活動にシフトしていった。ひない塾という地域の資源を利用して活性化するための組織を立ち上げて、異業種交流をしながら、地域づくりを考えてきた。そして町のランドマークを作って、キャラクターも作り、平成5年ぐらいからやっているとりの市もやってきた。その間にいろり塾にはまった感じで、ずっとやってきた。 |
01-4 ■秋田県の地域づくりをリードする ――秋田県全体の事務局も代表も県北にいるというのが面白い。 佐藤●若い人たちの活動が出てきて、そういう人たちをもっと増やさないといけないということで、肩書きのいっぱいついている人が上に立つのではなく、実際に活動している人を上にあげて、フットワークを軽くしたネットワークにしましょうということを何年間か仕掛けさせていただいた。 阿部●それは知らなかったな。 ――そういう議論はどこでされるんですか。 阿部●企画委員会があります。 ――それは何人ぐらいおられるんですか。 阿部●県の出先がある8つの地域から8人出て、企画委員会が構成されている。私が会長になったのも、当時の会長が突然辞めたので、別の人が代行を務めたのですが、その後、私がすることになった。 ――ずっと県北の人が会長なんですか。 阿部●いろり塾が出来て最初の会長が県北の人で、ずっとその人がしていた。 ――ネットワークは残したいわけですよね。 阿部●残したいですね。 佐藤●残すべきだと思っています。 ――あとは県との絡みかたですね。 阿部●県との絡みを無くしてしまうと本当に関係が切れてしまう。 01-5 ■行政の人の地域づくりへの関わり ――行政の人は地域づくりにどのように関わったらいいと思われますか。 阿部●行政は何をしているの?という感じですね。私の持論ですが、行政の人間は地域のためにあるべきだと。金もらってるわけだから。 ――金もらって地域に関わる仕事をしているのですよね。 阿部●24時間、地域のことを見ていなさいと、いつも思うんですよ。地域の問題に対しては親身に取り組んでくださいと。少なくとも自分の仕事があって、そこをどうにか良くしようと思うと、それぞれ地元にいるわけですが、問題が浮かびあがってくるでしょうと思うのだけど、なかなか、そうはなっていない。 佐藤●遠野の道の駅で1坪ショップを作った女性たちの活動を支えてくれた行政の職員のような人もいますよね。行政は住民が活動しやすいような状況をつくるために努力するのが仕事だから支援し続けてくれているとうかがっています。 ――行政の人は地域の中では能力の高い人がまとまっているところ。それなりの人件費を払っているのですから、彼らの能力を活かさない手はないということをよく申し上げている。彼らの能力をいかに活かすかが、地域を魅力的な場に変えていくためにも重要なことです。 阿部●行政というのは地域の人からみると毛色が違った存在に見えるところがある。地域に入っていくとお客さんになってしまうところもある。信頼を得るには地域に入っていくことが必要だ。 佐藤●行政も本当はやっていないわけではなくて、下積みのこととか、いろいろやっているんですけど、それを公表しないと、やっていないと言う人が多すぎることはマズイ。それとやる側も、分からないことを敷居が高いと思わないで、敷居を飛び越えてダイレクトに行くという勇気を持つことが必要です。 ――最後は人間的に信頼されるようになれるかですよね。どんな事業に関わっていようが。 阿部●行政の人は競争しないですよね。身分が保障されて安定していますから。そこで止まっちゃう。 ――阿部さんも一応市役所の職員ですけど、市役所の中ではどのように評価されているのですかね。 阿部●地域づくり活動はプライベートですから、評価されてることはないでしょう。 佐藤●去年、亀地宏さん(ジャーナリスト)に来ていただいてシンポジウムをやった時、シンポジウムの後の懇親会で、前町長が、阿部さんは普段はおとなしいけど、こんなことをちゃんとやっていたんだなと言われ、感心されていた。 ――静かに、潜行しているんですね。 佐藤●秋田県の場合は、多分、派手にやる人と、地道にやる人と、二手に分かれていて、派手にやっている人が地道なことをしっかりやっているかと言うと、そうでもなかったり。地道に仕掛けている人は声をあげなかったりで、美徳とは言わないけれど、なんとも思っていない。 阿部●役所は恵まれています。休めますし、いい身分です。みんなが、なぜ地域づくりをやらないのかな、楽しいですよ。自分の世界がどんどん広がっていきます。それと、いろんな人と会うと、知識も広がっていきますし、それは当然仕事にフィードバックできるので、仕事にもよい影響が出ているはずです。 ――遠野の菊池新一さんから、これまでされてきたことをうかがって、その実績に驚きましたね。 阿部●行政の中にも立派な人がたくさんいます。 01-6 ■人口ではなくコミュニティの数で評価する ――世界が広がると、もっと仕事が楽しめますよね。 佐藤●本当、その通りだと思う。 ――行政の中だけで仕事は完結しないので、すべからく地域の人々や企業、施設などと関わることで、仕事が進んでいくのが当たり前です。民間とのパイプをどれくらい持っているかによって、仕事がうまく運べるかが違ってくる。 阿部●民間の人でつきあいのある人がいっぱいいれば、いざという時でも電話一本で頼めることもある。 佐藤●行政マンもその立場になって初めて、それができるかどうかが分かってくるのかもしれない。 阿部●忙しいけど、楽しい。地域づくりもライフワークですよ。小さなコミュニティをこれから、ますます重視していかないといけない。しかし、50年前にあったコミュニティは残っているところが多いが、今後50年それがどれだけ残っているだろうか。コミュニティがなくなるというのはさびしい話だ。人口ではなくて、コミュニティの数で地域を評価すべきだと思う。 |
01-7 ■ワンディシェフの店 ――大館で頑張っているという「ワンディシェフの店」について教えて下さい。 田畑●ワンディシェフの店を始めた湯瀬さんは、結婚相談所を目的にしたNPO法人を作りたいと、昨年の春ぐらいから私の勤めるセンターに通っておられました。少子化を憂いて、結婚しない男女が増えている、結婚しても子どもを生まない、日本の将来が心配だ、ということで、昨年の9月にNPO法人早麻ライフサポートセンターを設立しました。さらに、昨年末から、ワンディシェフの店の準備をしてきた。 その際には、平成15年の秋に秋田県のコミュニティ・ビジネス推進事業第1号として認定され、ケーキの店をスタートさせている畑沢貴美子さんがサポートしています。畑沢さんは、それまで20年間、地域の運動会などに手づくりケーキを出して好評を博していた。それをコミュニティ・ビジネスとして事業化したらどうかと私も提案した。県からいただいたお金で、自宅を改造して厨房や包装するところを作った。 そして、スタートして、徐々に販路も広がり成功してきた。昨年のクリスマスには250個のケーキの注文を受けた。添加物を加えていない自然食品で、しかも値段も安い。彼女はスポーツ少年団やフリーマーケットを開いたりと地域活動に熱心に取り組んできた方です。 そのような畑沢さんの成功もあって、湯瀬さんが早麻ライフサポートセンターを立ち上げると同時に、ワンディシェフの店も一緒に開きたいということになった。そして、2月8日にオープンしました。空き店舗対策事業として、最初の1年間は県と市で家賃の4割を出すことになっています。2年目は2割補助になります。改装費の30%を出すという補助金もつきました。そういった補助金を得ながら活動を始めました。 ワンディシェフのモデルになっている四日市の「こらぼ亭」は70名ぐらいのシェフを抱えているけれど、彼女の店はスタートしたばかりで、10名に満たない状況です。空き店舗を利用して、毎日交代でシェフをする、そして人的なネットワークをつなげながら、広げていこうとしている。地産地消を特徴に、地場の素材を仕入れて、食事に活かすことが基本です。さらに、地場産品の販売コーナーも設けています。 01-8 ■行政の積極的な動き 田畑●昨年4月に大館市で「中心市街地活性化事業」ということで、大館市長が陣頭指揮しながら、部課長さん中心の委員会が発足しました。それから、担当係長さんの委員会も始動して、行政主導で中心市街地の活性化の事業に取り組んできている。 一方、大町まちづくり協議会という民間の団体も出来て、そこには市、市民代表、学識経験者など10名ほどの委員が参加している。国から100万円の補助金をいただいて、自分たちも行政と一緒になって、地域の活性化、まちづくりをしましょうということで立ち上がった。ということで、湯瀬さんもそういった動きに自分も貢献できるねと、一緒にやりましょうということになった。私は、サポートセンターの立場から、補助金申請や、チラシづくりとかのお手伝いをさせていただいた。 01-9 ■NPO秋田県北NPO支援センター 田畑●秋田県北部男女共同参画センターと北部市民活動サポートセンターを受託しているのがNPO法人秋田県北NPO支援センターです。指定管理者制度に従って、5年間運営を受託することになっています。私どもは、出来るだけ現場に足を運びながら、支援活動をさせていただいています。人と人とのつながりを広げながら、人を最大の財産ととらえて、活動しています。 ――田畑さんの支援は具体的にどのようなことになるのですか。 田畑●具体的には、北部市民活動サポートセンターの立場として、ボランティア・市民活動の相談・広報誌の編集、県の補助金申請のお手伝い、NPO法人設立のお手伝い、空き店舗対策事業の申請のお手伝い、オープンする際には周辺への挨拶回りもお手伝いします。それから、チラシづくりのお手伝いなど、出来る限りのことをさせていただいています。 ――コミュニティビジネスについて、地域の課題はどのようなことでしょうか。 田畑●地域で困ったなという問題とか、課題は行政だけで解決できなくなっているのが現状です。そこで、ボランティアが集まって、それが市民活動組織となりながら、地域住民自らが解決していかないといけないという機運が生まれてきた。その一環として、私どもはNPO法人の立場もありますし、行政と協力連携しながら地域づくりのためにやっています。■ |
vol.18巻頭特集02 「コミュニティビジネスの現場」へつづく | |
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