情報誌「MyPage」バックナンバー
▼参加団体紹介
柳田特用林産研究会
代表者/小箱 政治
担当者/高市 範幸
鳳珠郡能登町当目28-1
〒928-0334
TEL 0768-76-1552
FAX 0768-76-0300
 地域の資源である里山を利活用し、地場産業興しで交流の場を生み出していくことを目指して活動中。現在は主に、きのこ栽培の研究と「きのこの山」の管理を行っている。

MyPage17号に掲載(2005年11月発行)

里山を暮らしに取り戻そう
 柳田特用林産研究会、通称「とくりん研」。奥能登の山間部にある柳田は元々林業が盛んだったが、今は日本中の多くの地域同様、人々の生活が里山と離れ、山が荒れてしまっている。こうした中で、里山を活かした活動をしたいとH12年に活動がスタートした。
 山に風と光を入れてやること(間伐)で山が甦るし、ツーリズムの可能性もある。親しみの持てるテーマで山への興味を持ってもらおうと、木炭や木酢液の取り組みも経て、現在は「きのこ」がテーマ。ただし腐葉土等を相当量入れても、自然のきのこはそう出るものではない。そこで、きのこを山で育てようと実験を繰り返した。
 能登シメジ(正式名称:ハタケシメジ)は、シャキシャキとした歯切れが特徴で、料理の主役になれるきのこ。「匂い松茸、味しめじ」と言われるホンシメジに非常に近い品種だが、真剣に取り組んでいる県は少ない。多糖類も多い機能性食品で、日持ちもよい。それを栽培できる可能性が研究によって出てきた。鶴来の石川県林業試験場で菌を培養してもらった。

きのこを通して人と地球が見えてくる
 きのこは地球環境を考えるバロメータにもなる。とくりん研の活動は“栽培”とは言うものの、ほとんど自然の影響下にある。まして近年の異常気象の影響を人間よりも受ける。近年は南方系のきのこも能登に入り込みつつあり、地球温暖化の影響も否定できない。
 きのこ狩りからも現代がよく見える。マナーがはっきり出る。バケツ1杯千円なら隠してでも3杯5杯と採る人が出てきたり、根こそぎも甚だしい。後の人や来年以降のことも全く関係ない。人間の見たくない部分を赤裸々に見せ付けられ、悔しいことの方が多いという。
 一方で、自分たちの手による環境づくりに理解が得られつつもあり、特に去年から急激に関心が高まった。とはいえ本来の仕事をしながら、収入になるかどうかも分からない山仕事。重労働で危険も伴う。誰でもという訳にはいかない。実働メンバーは7人になったが、キレイ事とボランティアでは継続していかない。
 目的は、山をきれいに健全にすることで里山の利用が活気付くこと。公的機関にも思いをぶつけ、森林関係の機関とも連携していきたいと考えている。

諸機関の協力も得て大実験開始
 今年は合併した能登町でエンデバーファンドの申請が認められ、活動が大きく前進した。まちづくりのための寄付金有効活用制度で、念願の自走式チッパーを購入。薬品の懸念がある外材のチップ等ではなく、山で伐ったその場で雑菌のない新鮮なチップを菌床ブロックの周りに戻し、数年後にチップからの生育が見込めるかどうかを問う大実験が始まった。オリジナリティの高い取り組みはNHKの特別番組にもなった。
 1年2年では答えが出ない。5年10年後にきのこが出てくれたら実験成功と胸を張れる。しかし、キノコの商売は本当に厳しいと言われる。ファンドの審査員からも「大型の投資は一切しないこと」と忠告を受けた。
 現在は、マイタケ、ヤマブシタケ、タモギタケなど、9種類に取り組み中。今年はブロックからの生育で4.5kgの大物まで出たが、殆ど売れなかった。“本物”を知ってもらう宣伝と割り切って配り、「あんな美味しいものやと思わなかった」と好感触を得た。できれば合併新町の特産品にと考えている。観光客から「能登はきのこ一本でも本物だね」と言ってもらえるように。小さなきのこから、大きな夢が広がっている。



天然のきのこならではの
一味違う風味は
里山の恵み。




間伐した木を
その地で利用する。
まずは大きな枝を敷く。




葉は鉄分が多いため
手作業で取り除き、
小枝をチップにする。




チップの中に
菌床ブロックを入れる。
菌の定着を願って。

vol.17 「団体紹介」へつづく

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