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03-1 ■まず一人で始める 高峰◆塾を作られてどれくらいになるのですか。 島袋◆平成11年に立ち上げましたから7年目ですね。エコツーリズム協会も11年に設立しています。 実は、何もないところに先に協会を作りました。協会を作ってどう仕掛けをするかという時に、私が発起人だったものですから、「まず一人でやってみよう」と一人で始めた。協会を作っても、やる人がいなければ何もなりませんからね。協会を作ると同時に、全くゼロからスタートしたわけです。 行政もさほど協力的では無かったです。当てにしていた訳では無いですけどね。行政を当てにしては、こういうことは出来ないですよ。 高峰◆商工会は絡んでいたんですか、事務局は商工会においてありますね。 島袋◆最初の事務局は、商工会には置いていなかったんですよ。当初予算要求したら、事務局経費も切られたんです。それで事務局の専従職員が手当できないから事務局を置けない。そこで、商工会もむらおこし事業をしていますので、商工会に置くことにした。 商工会長が協会の副会長を当初からやっていますし、そういう意味では、商工会ともいろいろ連携した形になっています。いつもどうするか話しながら進めてきました。 赤須◆11年に立ち上げたというのは、有限会社を立ち上げたということですか。 島袋◆協会が5月31日にできたのですが、自然塾は4月から準備を始めていました。協会の設立とほぼ同時なんです。ただし、その時は会社にはなっていなくて、ただ「やんばる自然塾」ができただけです。有限会社にしたのは4年後の平成15年7月です。 それまでは、一人増え、また一人増えと徐々に大きくなってきて、もう個人経営では駄目だということで、会社組織にしました。 03-2 ■農業からの転換 赤須◆島袋さんは、本業は何だったんですか。 島袋◆本業は農業をしていたんです。生まれも育ちもここです。この地区の区長を平成7年から11年まで4年間していました。我々のやったことは、地域おこしの中から生まれてきています。自分で地域おこしのリーダー的な役割を担って引っ張ってきて、ある程度の素地を作り、種を蒔いてきましたから、私の区長が終わる時に、「だれがやるか?」という中で私がやらざるを得ない状況だった。 高峰◆「言い出しっぺが自らやる」というのは良いことではないですか。 島袋◆花卉農家として儲かっていましたので、わざわざこれをやる必要はなかったんですけどね。今、事務所の下にカヌーの艇庫があるんですけど、あれは元は花の出荷場だったんです。みかん畑は今もありますし、農業もちょっとずつやっています。 高峰◆最初の設備投資が少なくて済んでいるから、良いですね。 島袋◆それが、私がここまで来れている要因です。設備投資をしない。増えた分だけ増やす。最初は私の家を事務所にしてやっていました。大きくなれば大きくなったで、設備を広げれば良い。そういうのはコストが掛からないですからね。 高峰◆今は何人スタッフがいらっしゃるんですか。 島袋◆常勤で私を入れて8名と、非常勤でガイドをしているのが8〜9名います。あとは、地域のおばさんたちが農業体験、料理体験を行います。これが10名くらいで、合計すると30名ほどになります。100%地元です。 赤須◆他から来た人というのは? 島袋◆他といっても、やんばる地区の人です。 03-3 ■よそ者も必要 高峰◆本土から来た人はいない? 島袋◆いませんね。本当は欲しいんですけどね。ここまで大きくなってきたら、これからどう展開するかという時に、スペシャリストだとかノウハウや知識を持った人たちが必要なんです。そういう意味では外の人が必要です。今でも欲しいと思うけど、地元に住める人だったら良いんですけど。 今までは、ある程度までほとんど私が仕掛けをしてきました。 赤須◆インストラクターの教育はどのようにされていますか。 島袋◆ほどんどOJTでやってきた。最初は「アシスタントとしてそばで見ていて」と誘うんです。その場合も日当を出します。見ててお金がもらえます。分からない人が始めても収入になるし、分かりはじめるともっと収入になる。どんどん日当を上げて行きますから、そういう面で引き込まれた人が何名かいるんじゃないかと思います。 赤須◆体験メニューを開発するのは島袋さんの担当なんですか。 島袋◆そうですね。修学旅行のメニューもそうです。少人数のエコツアーが6コース、修学旅行のコースが8コース、全部で14あります。県内の小学校向けのコースもありますから、合わせたら20ぐらい。全て一人で作った独自プログラムです。 03-4 ■地域とのつながりが不可欠 高峰◆マングローブの森がすごいですね。 島袋◆こういう資源があるから始めたんですが、でもそれだけに特化したメニューではなくて、どこでも出来ることなんです。こういうプログラムを作れるかどうか、地域と一体化しているかどうか、地域に認められているかどうかですね。集落の中を歩きますから、地域と離れていては難しい。地域の人を雇用するのは、そういうこともあるからです。 赤須◆見慣れない人が歩くと、「何だ」ということになりますからね。地域の人は大分慣れてきた感じですか。 島袋◆そうですね。当初はいろんな反対もあったんですけど。新しいことを始めたわけですから分からないでしょうし、全員にきちっと説明ができるわけではないですから反対の人ももちろんいました。そういう意味では当然じゃないかと思います。 「そういう人たちにどう理解してもらうか」ということもやらないと、できない事業です。スタッフにも、「地域にお世話になっていることを忘れるな」と口酸っぱく言います。挨拶とか。そこがスタートですよね。 地域が我々を食わしてくれている。地域があるから生活ができているということを意識させています。 高峰◆先日も長野県飯山市の「森の家」の木村宏さんに若狭にお越しいただいて勉強会をしたんですけど、彼のところの最初のスタッフはすべてよそ者でした。それで、地域の集会や祭り、掃除などに全て参加させたそうです。地域の人と仲良くなることを、最初に徹底して行っています。 島袋◆地域の人を知らないと駄目ですし、地域に入らないと駄目ですね。我々も地域の行事は優先なんです。沖縄はいろんな行事がありますから。全員は出れなくても、必ず誰かが出るようにしています。 03-5 ■新たな事業モデルを示す 赤須◆やんばる自然塾は、地域で雇用を作ったという意味は大きいと思います。次に、これによって地域を変えていくという思いは、何かあるんでしょうか。 島袋◆そうですね。次に考えられるのは、人材育成の部門です。 私が仕掛けをしていろんなプログラムを作り、エコツーリズム、自然体験に力を入れつつ、グリーンツーリズム、農泊、農業体験、漁師さんの「うみんちゅう」の体験など、いろんな体験があるんですが、それは波及効果をねらっているんですね。 それは私が仕掛けるんではないと思うんです。仕掛けようと思ったら仕掛けられるんだけど、そこまでやってしまうと、自然塾だけのものになってしまって広がりが出てこない。村全体に広がるためには、他にやる人たちが出てこないといけない。でないと地域の力が上がっていかない。 今、私のところだけでも、修学旅行が200校余り来ています。少人数のツアーと合わせて20,000人ぐらいになっており、これでいっぱいだと思っています。我々のところにはキャパシティはあと少ししかない。これまで培ってきたものを提供できる段階に来ていますから、次は私どもも勉強しながら人材育成をやっていきたい。 高峰◆体系的な人材育成プログラムをお考えですか。 島袋◆そこまではまだできないですね。視察だけでも年間に30件ほどありますから。学生が卒論書きに来たりとかもします。 高峰◆積極的にインターンや研修生を受け入れて、それをきっかけに最終的に移り住む人が出るといった状況を目指すことも必要ですね。 島袋◆そういうシステムづくりが出来ないかと、先日もホールアース自然学校に勉強に行ってきた。いろんな形がありますからいろいろ見てみないと、沖縄でどういう形ができるのか分からない。全国のいろんな人たちの話をうかがうことも大切なんですよ。 高峰◆九州ツーリズム大学を卒業された方々の中から、農家レストランや農泊を始める人も出てきていますね。 島袋◆自然塾だけで常勤が8名いますけど、東村にエコツアーをメインとした業者が5つはあります。そういう意味では、いろんな面で波及効果が出ています。 赤須◆それぞれはうまく回っているんでしょうか。 島袋◆まだ、出来て1、2年ですから、そこまではいっていないと思う。ある意味では、私が利益を得ているとか、ここまで集客があるというのを見て、「私も出来るな」と考える人が増えてきたのも必然だと思う。あとは、来たお客様をどこまで自分のプログラムでつかまえていくかでしょう。 高峰◆皆さんのモデルになっていらっしゃるということですね。 島袋◆一番分かりやすいプログラムになっているんではないですかね。 03-6 ■人数限定でリピーターをつかむ 赤須◆事務所の前に到着したタクシーは何ですか。 島袋◆高校の修学旅行です。4泊5日の間に、全員で体験する日とグループに分かれて行動する日があるんです。 赤須◆ここには泊まっていないんですか。 島袋◆この辺には宿泊施設がなくて、全てよそから来るんですよ。ここは体験だけのプログラムになります。宿泊まであれば、波及効果としては大きいですけどね。そこまでのプログラムづくりは出来ていない。 高峰◆農家民宿でもいいですから、増やしていただければ良いですね。 島袋◆そうですね。それも見えているんですけど、そこまでは手を出さない。他の人にやって欲しいんです。「自分たちで考えて!」と、ある意味では投げかけています。 グリーンツーリズム研究会ができ、農家民宿の取り組みも出てきていて、昨年は10校ぐらいは扱っているみたいです。彼らがきちっとしたプログラムづくりができれば、一緒のプログラムに載せることも可能です。あと1、2年したら大丈夫だと思っています。 赤須◆リピーターのような方は多いのですか。 島袋◆多いですね。学校団体のリピーター率も50%近いと思います。今日来ている名古屋の学校も今年4年目ですかね。毎年500名くらいの人が来て、全員がこのプログラムを体験します。学校によっては40名だけというところもあります。 一般のグループのリピーターも多いです。私のところは、宣伝もセールスもするわけではないけれど、直に入って来ます。例えば、直接その人が来るんではなくても、体験した人の紹介で来る人も多い。個人客は、ほとんどインターネットや電話で直に予約が入ります。旅行社からも話が来ますが、あまり使いたくない。契約をするとその通りしないといけないでしょう。我々がある意味でコントロールできる範囲の旅行社とつきあっています。 修学旅行も、我々が組んだプログラム以外はやりません。「それで良い」というところだけ、それも1日2校までしか受けないようにしています。自分たちが主導権を持ったプログラムづくりをやっています。■
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vol.16 「交流とネットワーク」全国研修交流会へつづく | |
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