40歳で脱サラ、夫婦で就農。日々の暮らしを大切に、果樹園農家として歩みだした。

杉森 吾郎(すぎもり ごろう)さん・愛(あい)さん
Iターン(和歌山県→加賀市)

吾郎さん/和歌山県で事務関係の仕事に従事していたが、2019年に石川県加賀市にIターン。移住後は、梨農家としての独立を目指し、妻の愛さんとともに加賀市の奥谷(おくのや)梨生産団地で栽培に関する知識と技術を習得中。

2019年5月に和歌山県から加賀市に移住した杉森夫妻。移住前から加賀市の梨農園で仕事体験を重ねてきました。移住後は園主のもとで栽培技術の習得を進め、果樹農家として独立を目指しています。生産組合や面倒見のよい園主に見守られながら、順調に歩みを進めています。

■これからの生き方を模索

和歌山県では事務関係の仕事を続けてきましたが、これからの人生を考えたとき、移住して今までとは違う仕事をすることを検討し始めました。親戚の家が梅の栽培をしていて、手伝いをしていた影響もあって、農業にも興味がありました。
夫婦で何度も話し合い、移住に向けた具体的な話を相談するために、大阪での移住イベントに参加するようになりました。

■石川の移住セミナーで移住体験談を聞く

2018年春、大阪での石川県主催の移住セミナーが、農林水産業をテーマにしたものだったので参加してみました。セミナーのゲスト講師で、それまでの仕事を辞めて移住して新たに農業や漁業に就かれた方の話を伺うことができ、移住就農に向けてのイメージを膨らませることができました。
その後、移住コーディネーターに相談に乗っていただき、加賀市の梨園での仕事体験を提案され、参加することにしました。梨が好きだったので、興味をひかれましたね。

■仕事体験を繰り返し、季節ごとの作業を知っていく

2018年6月に、まずは1泊2日での仕事体験。26戸の梨農家が活動している奥谷梨団地での体験となりました。このシーズンの梨園の作業として、摘果作業を経験させてもらいました。体験は半日でしたが、暮らしのイメージをつかむために、滞在中の他の時間はコーディネーターの案内で地域をいろいろ見て回るなどしました。次に9月の収穫の時期に訪れ、収穫作業を経験。この日は一日かけて、収穫や選果、さらに選果場での仕事も体験させてもらいました。

そして、次に訪れる時には、それまでの体験時にも受け入れと指導をしていただいていた田中さん(当時の奥谷梨生産組合長)に就農に向けての相談をすることになり、これもコーディネーターに日程などを調整してもらいました。10月に再訪問して面談した際、2~3年はアルバイトとして一連の仕事を経験し、一通りのことが身に着いた段階で一区画を任せていただけるとの話をいただき、それで移住を決めました。移住決断後も梨園での仕事体験を続けました。

■住まい探しでは方針転換もあった

仕事のめどがついたので、次はいよいよ家探しでした。最終的に翌年5月に移住するまでの間、11月、1月、2月、3月、4月と繰り返し加賀を訪ねては加賀市の暮らし体験の家を滞在拠点にして、空き家を見て回りました。市の空き家バンク登録物件や不動産会社に紹介いただいた物件など、10件以上は見て回りました。当初は購入するつもりでいたので、そのような観点で探していましたが、しっくりくる物件に出会えず、途中で方針を転換。まずは賃貸で住み始めて、しかる後に理想の家を見つけることにしました。

借りた家は、加賀市役所に情報が寄せられていた空き家の一つでした。大家さん立ち会いのもと、内部を見せていただき、その際にペットを飼うことや改修についての許可が得られたので、最終的にその物件を借りることにしました。その後、リフォーム会社の方と相談し、お風呂やトイレなどの水回りを改修しました。

和歌山から加賀に引っ越したのは2019年の5月でした。改修工事がそれまでに完了せず、引っ越しから最初の数日は暮らし体験の家に滞在させてもらいながら、仕事に通いました。住み始めた後も、自分たちで壁の漆喰塗りをしたりもしました。ある程度自由に改修させてもらっているので、いい経験になっていますし、満足しています。

■梨園での仕事、収穫期後は長い休暇も

ゴールデンウィーク後に移住してからは、5月から7月までは摘果を繰り返し、8月には収穫がスタートしました。収穫の時期は朝早くから作業をスタートし、量がたまると選果を行い、トラックに積んでいきます。この年は、気候の影響で早く熟したようで、9月末で収穫がほぼ終了しました。

収穫期はほぼ休日なしで作業を行うので、それが終わると長い休暇がいただけます。10月には久しぶりにふるさとの和歌山に帰り、ゆっくりできました。ただし、今はまだ時給でのバイト暮らしなので、休日が長くもらえるということは収入が極端に減るという一面もあります。そこがネックで、このような暮らしは長く続けられないなと感じる経験でもありました。早めに独立を果たし、園主として仕事をすることが、生活を安定させることにつながると感じています。

■秋からの剪定作業が来年の梨を育てる

11月からは剪定作業がスタート。主枝から横に伸ばした「ならし枝」(実をならせる枝)を横にできるだけ平行になるように引っ張り、縛っていきます。再来年度のための枝も何本かを残し、斜めに伸ばして、先を切っておきます。
1本の木を仕上げるのに何時間もかかるので、気の遠くなるような作業が続きます。園主の田中さんとスタッフ4人で作業を続けていますが、花が咲く4月までには終えないといけません。雨の日だと作業が中止になりますので、スケジュールが見通せない面もあります。
梨を育てる上で、一番大切な作業が剪定ですね。この技術をできるだけ早く身に着けたいところです。

■独立を当面の目標に

当面の目標は2020年11月の独立。できるだけ早く園主として独立できればと考えていますが、あくまでも我々の願望です。お世話になっている田中さんが「まだ早い、技術が十分身についていない」と判断されれば、1年延びるかもしれません。
独立後も田中さんには引き続きいろいろ教えていただきたいです。師匠となる方が近くにいてくださるのは、本当にありがたいこと。
虫対策の防除作業は奥谷の梨園では共同で行っており、令和2年から参加しています。

■日々を楽しむ暮らし、田舎暮らしの魅力

自分たちの生活の質を考えると、とにかく楽しむことを目標にしています。家族と楽しく、地域に根差した生活を追求できればと考えています。もちろん、評価される梨を生産できるようになりたいので、技術をしっかり身に着けたい。その一方で、サラリーマン時代と同じような仕事ぶりになるのでは、移住した意味がないとも思っています。基本的な生活の糧を得つつ、生活を楽しみながら生きていけるような、自分たちにあった規模を目指していきたいと考えています。
それが田舎ぐらしの魅力だと思います。

◎お二人が移住を検討する際に利用した、梨園での「仕事体験プログラム」も、ぜひチェックしてみてください。