新保 昭(しんぼ あきら)さん・ヒロ子(ひろこ)さんご夫

Iターン(神奈川県→白山市)

昭さん/サラリーマン時代は転勤が多く、石川県金沢市を含む各地での暮らしを経験。定年後も嘱託で勤務を続けて神奈川県で暮らしていたが、70歳を前に退職を決断し、石川県にIターン。

■SNSから始まり、イベントに参加して準備を開始

以前から、「いずれ70歳になったら仕事をやめ、移住しようか」と話し合っていた新保さんご夫妻。ご主人の昭さんは転勤の多いお仕事の都合で日本各地に居住経験があり、金沢にも2年間住んだことがありました。そうした経験も踏まえ、移住先はどこがいいか思いを巡らせ、石川県は移住先の有力候補に挙がってはいましたが、まだ先の話と考えていたそうです。

そんな頃、たまたまフェイスブックで、石川県の短期移住体験事業を受託している加賀白山定住機構が加賀白山エリアの移住支援を行っていることを知ります。連絡をとり、その時に案内された直近の移住フェアは仕事の都合で行けなかったものの、やりとりを続け、お台場の東京ビッグサイトで開催された全国規模の移住フェアに参加。直接お会いして相談をすることができました。さらに続けて2018年3月にも、東京での石川県の移住セミナーに参加。

移住後の第二の人生でもいろんなことに楽しくチャレンジしたい。そう考えると、当初に思い描いていた退職後の移住ではなく、「少し早めに移住しようか」という気持ちがご夫婦の中に高まっていきました。「どうせ移住するのなら、早いほうがよい」と、その年の12月を目標に移住することを決断。勤め先にもその旨を伝えて、移住に向けた本格的な準備に入りました。

家探しで、空き家を見学

■暮らし体験の家等に滞在しながら、家探しの日々

それからは、神奈川から何度も石川を訪れ、家探しを進めていきます。加賀市にある「暮らし体験の家」や小松市のホテル、白山市のお宿等に泊まりながら、あちこちの物件を見て回りましたし、鶴来商工会の事務局長さんのご紹介で空き家を見学させていただいたこともありました。また、県の移住サイトの不動産情報も利用しました。

住まいはなかなか決まらず、有名な白山比咩(しらやまひめ)神社にお詣りに行った帰り道には、借家の看板が目に入ると車を停めて、外観を眺めたりしていました。その後、定期的にチェックしていた石川県の民間不動産会社の物件が一覧できるサイト「8100(ハトまる).jp」を開くと、あの時に帰り道で見ていた物件が載っているのを見つけ、さっそく不動産会社に電話。移住してすぐは賃貸が希望という気持ちを伝えたところ、ご理解いただき、とんとん拍子で翌週には見せてもらえることに。改めて現地を再度訪ねることにしました。

そこからは速やかに話が進み、2018年9月に新しい住まいが決定。白山市鶴来町の市街地にも近く、落ち着いた雰囲気の漂う地域の一軒家で、12月から新生活をスタートすることになりました。

運よく巡り合い、借りられることになった家

■移住決定の段階で、ご近所さんに挨拶回り

ご近所の皆さんには、移住が決まった段階でご挨拶に回りました。転勤族だった経験から、引っ越し前に事前にご近所に顔を出しておくと、受け入れる地域の方々とスムーズに良い関係を築くことができると、よく分かっていました。地域の皆さんにとって、どんな人が越してくるのかは関心事かつ心配事。移住する側にとっても、ご近所にどのような方がいらっしゃるのかを先に知っておくことができて、安心感を得られます。先にご挨拶にうかがっておくことは、移住後の生活を円滑にスタートさせるためにも、とても大切なことなのです。

■人のつながりで、暮らしの幅が広がっている

移住後は、周りの皆さんとすぐに親しくなれました。引っ越してきたすぐの時にも、近所の方が野菜を持って「まだ何もないんでしょう?」と来てくださったり、誘われて山菜採りに行ったりしました。また、近所の方にアサツキが一面に生えている所も案内してもらいました。

その後しばらくして、「自分で畑もしてみたいな」と考えていたら、近所で借りることができました。そのきっかけは、近くの火曜日限定営業の喫茶店にコーヒーを飲みに行ったこと。そのお店にコーヒーを飲みに通っていたら、お店のママが他のお客さんを紹介してくださり、そのご縁で畑を借りられるようになりました。

その他にも、地域の行事に顔を出したり、きれいな景色を求めてあちこちドライブに出かけたりして、自然豊かな山麓の地域の暮らしを満喫しています。

畑のご近所さんからおすそ分け

■ご夫婦とも仕事を始めた

奥様は、ご主人が転勤族になってからはずっと専業主婦でしたが、移住して少し落ち着いた2019年春頃から、ご近所の方からの紹介で、障害者施設のお手伝いの仕事を始めました。利用者さんにお茶を出したり、食堂やトイレの掃除などを行ったりする、週2回程度のお仕事です。

ご主人も、奥様が仕事を始めた後、シルバー人材センターに登録。仕事の希望を伝えたらほどなく紹介があり、10月から隔週で地元の中学校の校務員さんをすることになりました。朝早くにカギを開け、職員室でコーヒーの準備をしたり、お茶を沸かしたり。それが一通り終われば、外に出て校庭の花に水をやったり、植え替えの作業を行ったりと、お二人ともすっかり地域の一員になっています。

■スポーツジムに毎日通って健康づくり

新保さんご夫妻が昔から続けている習慣が、毎日のスポーツジム通いです。白山市に隣接する野々市市の施設に毎日通ってお風呂に入り、週に2~3回はトレーニングをしています。サウナもプールもあるので、利用しやすいとお気に入りです。班長さんから、「夜はいつも家にいないみたいだけど、どこに行ってるの?」と聞かれたこともあるくらい。「戻ってくるのが夜10時頃になることも多いから、毎晩いないと思われたんだね」と笑います。

■サロン開設の夢ができました

まだ移住の思いがはっきりとしていなかった頃から、「移住先で、その地域社会の役に立つようなことができたら」と考えていました。だんだん思いが具体的になり、いま思い描いている夢は、地域の皆さんが気軽に集まれる場をつくり、そこでみんなで一緒に昼食も食べられるような食堂風サロンを開くこと。

そのために、サロンとしても利用しやすい物件探しを改めてスタートし、2020年に入った今も探し続けています。近所の人々とのつながりを大切にすることで、畑ができるようになり、仕事もするようになりました。運がよければ、ぴったりな情報がまた舞い込んでくるのではないかと期待しています。

「今のつながりを大切にしながら、新しいことに着手できる日がそのうち訪れるといいな」と、移住後の新生活の日々を楽しんでいます。

菜園で、収穫する大根を選ぶ。
「それ、いいんじゃない?」