持続的な暮らしを探求しながら、植物性100%のヴィーガンカフェを開業

山城 誠次(やましろ せいじ)さん   Iターン(東京都→能登町) 

東京都出身。東京で飲食店を経営していたが、短期移住体験を経て、2016年2月に能登町へ移住。漁師、自然栽培の農家をしながら、2018年3月にヴィーガンカフェ「茶房 梅茶翁(ばいさおう)」を開業。夏季はかき氷専門店「天然氷 のらび」も営業。


きっかけは能登旅行。短期移住体験で民宿と農家へ

能登に興味を持ったきっかけは旅行です。もともと民宿経営に興味があり、自分で野菜を作りながら農家民宿を開きたいと思っていました。そんな時に旅行で能登を訪れてみると、いずれ農家民宿を開くとしたら能登はぴったりな土地ではないかと感じました。海の美しさにもひかれ、移住するなら能登がいいなと思って、色々と調べた結果、東京で石川県主催の移住セミナーが開催されることを知りました。そのセミナーに参加した際、「短期移住体験プログラム」を紹介され、2015年秋に能登へ。同事業を受託している能登定住・交流機構を通して能登町内の民宿で1か月、その後は、農薬を使わずに栽培している農家さんで1週間お世話になり、移住を決めました。

 

移住後は働きながら、理想の家探し

2016年2月に移住。短期移住体験でお世話になった民宿に再度お世話になることにしました。自分で畑を借り、日中は畑を耕し、夕方からは民宿でアルバイト。空いた時間で出来る仕事はないかと、知り合いに紹介してもらったのが定置網漁でした。話を伺うと、漁師も高齢化で人手不足が深刻らしい。能登で生活していく上で、海に関わることは切り離せない仕事のひとつだと思っていました。自分が知りたいこと、ここでやりたいことにつながっていると思い、漁師もはじめることになりました。

一方、家探しでは能登町定住促進協議会や移住後に知り合った方にも相談。自分で開業するなら、親子連れのお客様にもぜひ来てほしいし、お子さんたちが外でのびのび遊べる広い環境がいいなと思っていました。その後、協議会と知り合いの方からそれぞれに紹介された家が、たまたま同じ山間部にある古民家だったのですが、そこで理想に近い環境が見つかりました。冬は寒いですけどね。(笑)

平屋の古民家(梅茶翁Facebookページから)

 

肉も魚も乳製品も使わない、植物性100%のヴィーガンカフェを開業

早朝は漁師、日中は畑仕事と店の開店準備をこなし、2018年3月に「茶房 梅茶翁(ばいさおう)」を開業。肉や魚、卵や乳製品、蜂蜜など動物性食品を一切使わないヴィーガン料理店です。提供するメニューは「オーガニックジャンク」と呼んでいます。野菜カレーや、肉なし肉まんなど、見た目はいわゆるジャンクフード。それが全て植物性なだけなんです。これまでのヴィーガン料理は、ただ動物性を抜いただけで美味しくないものが多かった。味の足りない部分を植物性の他の素材で補うことで、しっかり味わえるメニューになっています。調味料も植物性。ドリンクやシュガーレススイーツも用意しています。まずは気軽に食べていただいて、興味を持ってもらいたいですね。

東京にいた頃はラーメン店を経営していました。一緒にやっていたスタッフが動物性を食べなくなり、まかないが植物性になりました。そこから自分の意識が変わってきました。普段使っている食材が本当に安全なんだろうか、どんな環境でどんな風に作られているのだろうかと考えるようになりました。

これからは自分で出来る範囲で農薬を使わない野菜を作りたい。自分たちで作ったものを提供するにはヴィーガンに絞ってもいいのかなと思いました。当時はそういったお店が少なかったので、外食で苦労される菜食主義の方がたくさんいました。能登に旅行に来るのにお弁当を持参するのは大変ですよね。ここならば能登のいろんな食材があるので、やっていく価値があるのかなと思います。

日替わり旬菜ランチ(梅茶翁Facebookページから)

 

能登の冬は寒い。あたたかくて燃費がいいロシア式ペチカを製作中

今は店舗改修のため、お店は休業し、ロシア式ペチカを手作りしています。完成したら通年営業にする予定です。ペチカはロシアで古くから使われているレンガ造りの暖炉。寒い国では珍しいものではないですが、日本では限られています。特徴は蓄熱するので燃費がとてもいいこと。薪ストーブで使う薪の量の3分の1ほどで済みそうです。
能登の冬は底冷えします。以前、山梨県の標高1000mのところにいた頃は-20℃を経験しました。能登は寒くてもたかだか-5℃くらい。平気だろうと思っていたら実際の体感はすごく寒いんです。能登は関東と違って湿度が高い。ペチカを焚くことで空気が乾燥して洗濯物も乾きそう。こちらの暮らしに合っているのかなと思っています。
ペチカづくりは興味を持っている人がいるだろうと、ペチカづくりに一緒に参加してもらうお手伝いワークショップを企画したところ、9日間でのべ200人ほどが集まりました。

製作が進むロシア式ペチカ

自然の循環が感じられる場所で、持続的な暮らしを

お店はヴィーガン料理を提供しますが、自分たちの暮らし方は、ストイックになりすぎず柔軟にいろんなものを取り入れたほうがいいと思っています。ここは山と川と、ちょっと行けば海がある。ヴィーガンでは魚を扱いませんが、魚がいるから生態系のバランスが保たれています。自然の循環を身近に感じられる環境で、こうしたお店をやる意味はあるのかなと感じています。

2020年の冬にはペチカが稼働し、あたたかな空間になるので、客足が減る冬にこそゆっくり滞在してもらえたら。ゆくゆくは宿もはじめたい。ここが人が集う場所になればいいなと思っています。

山城さんと愛犬のいちまつくん

茶房 梅茶翁(ばいさおう)
〒927-0311 石川県鳳珠郡能登町瑞穂18-83
TEL.080-6773-3923 
店舗改修のため休業中。再開時期(2020年春予定)、イベント出店情報は下記HP、Facebookでご確認ください。

URL http://baisaou-noto.blogspot.com/
フェイスブックページ https://www.facebook.com/okunoto
天然氷のらび〜Mizuho氷蜜Base〜 https://www.facebook.com/norabe369

(2020年1月に取材しました)