◆大きな施設から小さな「おうち」へ
常光さんは、吉野谷村(現・白山市)の特養「大門園」で、職員として出会った南出洋子さんとともに、ミニ・デイサービス「菜の花のおうち」(南出さんが代表)を営んでいる。
大門園には施設のオープン前から関わり、「自分の親だったらどうするか?という視点で施設を作っていこう」という熱い事務長さんの下、「すごく嬉しい仕事」を6年間した。その後、「規模を大きくしないと採算が合わない」という「男の発想」による方向転換で、状況が変化。そこで考えたのが、小ぶりで、できれば日中の暮らしを助けるデイサービスのお家ができないかという事だった。
優秀な介護職員や理念のある施設長のいる施設だけは隈なく見ておいて、そこにも繋いでいき、家族が「こういう風に過ごせるのなら、家でも共に暮らせるわ」となるような応援団になろうとしている。
◆志を実現するための議員
自前の施設を作ろうと行政に相談に行ったが、対応は冷たかった。「その時に思ったの。これきっと、地域に顔の売れた男だったら、行政はこんな対応はしなかっただろう」。女の発想が形になりにくい社会を実感した。
そんな時、たまたま市会議員の選挙があり、女性議員が誰もいないという声が上がった。議員になったのは平成9年12月。「菜の花のおうち」を作ってすぐ。「そんなつもりはなかったんだけど」。
◆将来はよきはたらき場所に
男性ボランティアもいる。定期的にゴハン作りに来たりはしないれけど、遠出の時にお願いすると車を出してくれる。おかげで加賀市や和倉温泉、能登島のひょっこり温泉にも行った。「どうやってできるの」って言われるけど、お金が無い分、知恵と工夫でやっています。
ボランティアの基本は無報酬。将来は、この小さな施設が福祉専門職の良き働き場所となれるよう財政基盤を安定させたい。幸いにも平成18年7月に介護保険の指定施設になり、やっと一息といったところ。これをステップに、更に励みます。
◆たしかな記憶力
少しボケてきたかな、というお年寄りでも、昔覚えた熟語など驚くほど頭の中に詰まっています。平家物語をすらすら暗誦し、歌なら3題目までバッチリです。得意技と思われるところを意識的に引き出すことが大切です。
「子どもに帰る」なんて言い方は、本当にしてほしくない。昼間の「大人の暮らし」が継続できるところにしたい。
施設の名前は、踏まれても折っても、また横から花を咲かせる菜の花にあやかった。
「踏まれても負けないで、花を咲かせなきゃ!」。
私利私欲のためでなく、「それが幸せへの道だ」と思うことを行っていくことだ。
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