◆多様な子どもが集う
サポートハウスに集まるのは官と民の狭間、いわゆるグレーゾーンの子ども達。障害がある子も難病の子も健常の子も混じっていますので、障害者だけのための家でもない。行政は分けちゃうけど、分けることによってもれてくる子どもが出てきます。境界にいる明解に分けきれない人もたくさんいるはず。行政的には書類をいっぱい揃えたり、手続きがいっぱいあって、そのようなことが出来ない状況に置かれている人もいます。例えば、曜日や時間帯に関係なく、子育てに関する様々な悩みの電話や相談(もちろん急を要することもあります)を受けたり、子どもを緊急に預ったりもしています。なかなか行政的には対応できない、融通のきかない部分を、利用者の立場に立って利用してもらっています。
|
|
◆軽度な障害の子の支援
山本さんは長男に知的障害があって、苦労してきたので、このような活動を始められた。小さい時は障害を親がなかなか受け入れられない。
軽度の子は、黙っていると障害があると見えないので、「頑張ればなんとか追いつけるのではないか」と期待してしてしまう。それでも、学校に行く段階になると、就学時検診で分けられちゃう。中学に入ると、周りの子ども達が大きくなってきて、大人でもない子どもでもない思春期に入っていくのですが、障害があると成長が遅いので、大きく差が開いてしまって、虐められやすくなる。進学の時は、養護学校をすすめられる。養護学校に行って当たり前という発想が学校の先生方の中には多い。
サポートハウスでは独自のプログラムを立て、フリースクールや塾に行ったり、畑仕事、ホースセラピー(馬の世話をしながら馬にも乗る)なども体験している。学校を選択しなかった子も通ってきているし、ハンデを抱えていて不登校になった子など、学校や家庭以外での居場所として、また親元を離れて自立生活の訓練の場としての利用や、家族以外の人とのコミュニケーションづくりの場として、日々子どもたちと楽しく活動しています。
|
|
◆ポテトの会
山本さんが主宰している知的障害の子ども達の会。4年活動していますが、保護者の声を踏まえて立ち上がったもの。知的障害の子ども達の遊び場がないというのと、学校から帰ってきても一緒に遊ぶ友だちがなく、家に閉じこもりぎみなので、みんなで友達づくりとかできる場を作ろうよということで始まった。年4回のイベントと保護者のための勉強会、毎月1回の「ミニポテたより」を発行し、会員の皆さんに情報提供しています。
|
|
◆スマイルクラブ 学校週五日制になったのをきっかけに、山本さんと音楽療法士の先生とで立ち上げた。知的障害児は勉強をさぼっちゃうと、できることまでできなくなってしまいます。学校としての学習を休みの日にするとしんどくなるので、楽しみになるプログラムを作っています。先生方がボランティアで関わってくれています。英語や国語、算数は現職の中学校から高校までの先生。中国語もあります。中国のたべものやお茶をいただきながら楽しむ。現在、12歳から18歳まで市内各地から27人の子どもたちが、毎月第1、第3土曜日の月2回、午前9時半から12時まで楽しく活動しています。
|
|
◆日常生活支援「サポートハウス」の誕生
サポートハウス代表の私には、今年18歳になった中度知的障害の息子がいる。自分が子育て中に(今でもそうだが)、いやでもぶち当たってきた行政の制度の壁、周囲の壁、学校教育の壁。そんな壁をすべて取り払い、共に生き、育ち合える場所が欲しかった。しかし全く無かったため、「だったら自分で作っちゃえ!」と自宅を開放して、障害のあるなしにかかわらず子どもたちの日常生活支援をする「サポートハウス」が誕生した。(2002年12月)
利用にあたっては、行政的な書類や手続きは一切無く、利用する側との話し合いの中で、曜日や時間帯など一人ひとりのニーズに合わせて組み立てていく方法にしている。
ここにはさまざまな子どもたち(親も含めて)が、いろいろな背景を背負って日常生活に即した支援を求めて集まってくる。年齢も5歳から20歳以上(大人になりきれない若者たち)と入り混じっている。その子なりのあり方を大切に、互いに教え合い認め合い、みんなが仲間だということを学びながら日々を送っている。
◆「協生、協存」の中で・・・・
最近ではよく耳にする言葉だが、こんなに当たり前で難しいことはないと実感している。知的障害をもった子どもは学校教育でも分けられてしまい、地域の中でも孤立しがちで、福祉施設の中での人生を余儀なくされる場合がほとんどである。不登校や引きこもりなど、ハンディが無くても学校や地域の中で人と交わって生きていくことがなかなかできずにいる子どももいる。軽度発達障害やアスペルガー症候群(高機能広汎性発達障害)の子どもはその独特の個性を分かってもらいにくい。学校生活や地域での生活がうまくいかず、居場所を求めている。
もちろん、健常と呼ばれている子どもたちの中にも、学校生活や家庭環境、心の問題などさまざまな問題を抱えている子どもがいる。
サポートハウスに集うこのような子どもたちとの日常は、毎日何が起こるか分からない混ぜご飯のようなもの。サポートハウス1週間のプログラムは、大まかな流れがあるだけで、それを基に子どもたちの生活にできるだけ多くの大人たちがかかわり、共に時間を過ごすことで互いに理解し合い、その子が今抱えている問題に一緒に取り組んでいる。
掃除・洗濯・食事の支援・後片付け・ゴミ出しや、自分の身の回りの細かなこと(歯磨き・入浴の仕方・トイレの問題など、基本的な生活習慣を自分でできるようになること)は、障害や問題を抱える子どもにとってそんなに容易なことではない。生活していくうえで必要な学習(読み書き・計算など)にかかる時間は、一人ひとり違っているが、将来自立していくことを目指して日々を送っている。
スタッフは全員ボランティアで、年齢も職種も違うけれど、それぞれのモチベーションを生かして子どもたちの勉強や生活力が身に付くようサポートしている。
◆未来に向けて夢発進
現在サポートハウスに集う子どもたちは、行政レベルでは対応が難しいケースがほとんどである。どこにも行き場が無く、自分の居場所も無く、ぎりぎりのところで毎日を過ごしている。親もまた疲れ果て、どこに助けを求めてよいのか、苦しさを心のうちに抱え込んだ状態でサポートハウスにやって来る。
そしてここでさまざまな子どもや大人たちに出会い、仲間と一緒にいろいろな経験をしていくことで少しずつ変わっていく。身体で感じて、見て、聞いて、お互いを分かり合うことで、それぞれの心の中に小さな一歩が生まれる。
泣いて笑って喜び合える仲間がいるサポートハウス。それぞれが一個の人間として、夢や希望をもち生きていけるように、他の子どもたちから仲間としてエネルギーをいっぱいもらいながら、真の意味での「協生、協存」を目指している。
資金・現物提供、スタッフとして協力いただける人、そして、障害や問題を抱えている方は遠慮なくたずねてきて欲しい。
|