情報誌「MyPage」バックナンバー
▼参加団体紹介
行政とNPOの協働を追求する
特定非営利活動法人
はづちを 

代表者/永井 隆幸 
連絡先/事務局:小中 明香里
加賀市山代温泉18-59番地1 〒922-0242
TEL 0761-77-8270
http://www1.kagacable.ne.jp/~hadutiwo/

MyPage12号に掲載(2003年3月発行)

行政と地域づくり団体の新しい関係
 山代温泉総湯の前にある加賀市の施設「はづちを楽堂」に、「はづちを」は事務所を置いている。そのため同施設の管理団体のように思われがちだが、山代の住民でつくった地域づくり団体である。正会員には商店主や飲食店主、旅館経営者が多いが、地域住民の交流を活動テーマにしており、商工観光振興は第一番目の目的ではない。まわりくどい説明になってしまうのは、「はづちを」が行政と地域づくり団体の新しい関係の先駆けであるからだ。従来なら地元商店街が管理を請け負ってきたであろう。
 ところがこの施設は、NPOの創意工夫で運営している。そこが新しく画期的で、また、悩みの多いところでもある。


地域づくり実践講座のコミレス実習をはづちをの茶店で開催。男性参加者もちらほら。


第1第3日曜に開く朝市"はづちを○市(がわいち)"。総湯のまわりを曲輪(がわ)と呼ぶところから名づけた。

専従職員の人件費を稼ぐ
 施設「はづちを楽堂」の目的は、高齢者の利用と賑わい創出である。この目的にかなった施設運営をするには、企画力や営業力が必要となり、能力を持った専従職員が不可欠である。ところが、加賀市からの施設管理委託費は、ほとんどが光熱費などの経費であり、職員の人件費は含まれていない。そこでNPOの「はづちを」としては、人件費や活動費を捻出するために、自前で収益事業を行うことになる。しかしながら、この不景気にあってNPOが利益の出る事業を行うことは容易ではない。

 いま日本中のNPOが、活動資金の調達に忙殺され、本来事業がおろそかになるジレンマに陥っている。「はづちを」もそうだ。そこから「はづちを」がどのように活路を見出し、そこに地域づくり推進協議会や行政が、どのように関わって来たかを、「はづちを」が始めた"コミュニティ・レストラン"事業(略称コミレス)を例に報告しよう。

コミュニティ・レストラン(※)
 「はづちを」では本年2003年3月9日から施設内の茶店で朝食サービスを始めた。誰でも利用できるが、主な対象者は食生活が不規則になりがちな老人やこどもである。温泉町では早朝や深夜に働く人もいて、朝食の準備もままならない家庭もあるところから、この事業を企画した。調理スタッフは地域から応募してきた高齢女性ボランティア4名であり、彼女たちの仕事づくりや生きがいづくりの役割も果たしている。
 料理は地産地消がテーマ。同施設で毎月第1第3日曜日に開く朝市「はづちを○市(がわいち)」に出店している、地元農家や橋立漁港の水産業者から、米、野菜、干物などを購入する。食器も山代の温泉旅館から不用品の提供を受けた。県が公募した"NPO協働推進モデル事業"(H14年度)に指定され、203万円の予算がついた。ここに至るまでに、約1年の準備活動があった。


はづちをが提供している朝食
※「コミュニティ・レストラン」とは?・・・地域の課題を解決することを目的に、運営される飲食店のこと。世古一穏氏が提唱している。女性や障害者の仕事づくり、ひきこもりや不登校の高校生などの社会参加など、いろいろなテーマで各地で運営や実験が行われている。


地域づくり談議。石川県九谷焼美術館で行われたが、第2部の世古一穂講師を囲んだ意見交換は、会場をはづちをに移した。

地域のコーディネーター
 事務局の吉田さんはNPO講座にしばしば参加しており、そこで地域づくり推進協議会(現・地域づくり協会)コーディネーター濱博一氏や私(赤須)と知り合い、地域づくり推進協議会の会員となる。また、NPO研修情報センターの世古一穂氏とも県の研修で知り合う。こうした出会いを活かして、加賀市に世古氏を招き、"行政とNPOの協働"をテーマにした地域づくり談議(8月)と、コミレスについての地域づくり実践講座(1月)を開催した。どちらも地域づくり推進協議会の主催事業であり、「はづちを」は金銭的負担なしに、このふたつのイベントを開催できた。もちろん、開催までには幹事役として、市役所や地域づくり団体に何度も足を運び、開催意義を説き、参加を呼びかけている。こうして、「はづちを」は知名度をあげ、地域のコーディネーターとしての実力をつけ、地域から信頼を得て、コミレス開業につながった。

 さて、開業から2ヶ月経過したコミレスであるが、やや苦戦しつつも、楽しみにする常連のお年寄りもいて、朝食サロン的雰囲気も生まれつつあるという。一方、加賀市はこどもの利用者には半額支援(250円)を、条件付ではあるが、制度化した。
「はづちを」と加賀市との関係はパートナーシップに向かって一歩前進した。


はづちを楽堂は、高齢者のパソコン教室、ピンポン大会、早朝太極拳などのサークル活動にも利用されている。


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