まちが生きるデザインとは?を探究する

文化と自然の息衝く町をフィールドワークする「いしかわサテライトキャンパス」。2025年9月、9名の女子大生が温泉街に2泊3日して触れたものは「まちづくりとデザイン」。
商いを切り盛りし、地域で奮闘する住民たちへ直撃ヒアリング。出汁屋とカフェ、手帳とカプセルトイ、浴衣と扇子などの事例からデザインを学ぶとともに、町の課題も掘り下げていきます。
行きたい町と、住みたい町。観光地と住宅地が混在するエリア。旅と暮らしが交差する温泉地。そのあいだにある感情を動かすデザインとは?商品とは?まちづくりとは?
環境デザインを専攻する学生たちが、辿り着いた答えとは――。
開催日 :2025/9/16(火)-18(木)
参加者 :昭和女子大学・環境デザイン学科の学生9名/教員2名
訪問先 :石川県加賀市山代温泉
移動手段:徒歩
町と店と雑貨のデザインを巡るフィールドワーク





東京で洗練されたデザインを浴びるように学んでいる素敵女子たちの心を、不意打ちのように奪ったのは――
小さくてポップなカプセルトイ。さらに手帳や手ぬぐい、Tシャツ、缶バッチに心が躍る。
その仕掛け人は雑貨ブランド「AIUEO」。靴下やマステさえも心を弾ませるアイテムに変えるデザイナーです。しかも直営店があるのは、偶然にも五十音図ゆかりの地・山代温泉。これは、本当に偶然とのこと。
実を言うと、山代温泉では2025年8月に「あいうえおの杜」がオープンし、360mの空中回廊が森の中に伸びあがるというのだから、フィールドワーク参加者のまなざしも「おおっ」と変わります。
もちろん、歩き疲れた身体を癒すのは温泉。雑貨を手に笑い合った後には、湯けむりのなかで汗を流す――これほど贅沢な「学びと休息の交差点」があるでしょうか。
問いは残ります。インターネットでなんでも買える時代に、なぜ人は“わざわざ”地域に足を運び、モノを買いたくなるのか?そこに潜む価値をどうデザインするか――それこそが「温泉×雑貨×まち」が投げかける宿題なのです。
本格とカジュアルの両立を目指した、あたらしい日本文化をリ・デザインする





出汁って、こんなにも美味しかったんだ。
まるでコーヒーを淹れるように、出汁をドリップする所作。ふんわりと広がる香り。黄金色の濃厚出汁。濃いけれど透き通ったうま味。顆粒出汁では味わえない、匂い立つ奥行き。ここにきて出汁は体験になります。
まるでバリスタならぬ“ダシスタ”の手元を見つめているかのように、食の本格とカジュアルの境界線がゆらぎます。
訪問先は、地元のお出汁屋さんが営むカフェ「PINECONE」。学生たちは、その一滴に宿る時間と工夫を肌で感じ取りました。出汁は「味わう」から「体験する」へ――そんな視点の転換が芽生えます。
そして、あくる日。アパレルブランド「KUTANI×KIMONO」を山代温泉に召喚。学生たちと着物のデザインについて意見交換。その浴衣の柄をデザインしたのは、伝統工芸品・九谷焼の作家たち。自宅で洗えてアイロン不要という機能性を持たせた意欲作です。伝統を纏いながら、気軽に街へ出られる“着るアート”としての未来を提示します。
出汁と浴衣。共通するのは「本格とカジュアルのあいだ」。学生たちは、その両立に挑むつくり手の葛藤や工夫を直に聞きました。
図書館とカフェという、コミュニティの潤滑油をデザインする。





「研究アイデアは温泉で生まれる?」――そんな奇妙な仮説を証明してくれそうなのが、この町です。
学生たちが訪れたのは「住民が交流する図書館」と「移住者が開いたカフェ」。そのどちらも、地域の会話を滑らかにする“コミュニティの潤滑油”として機能していました。
図書館では、「住民が関われる余白を残すことの大切さ」を学びました。そこでは本棚オーナーが自分の好きな本を並べたり、おしゃべりを始めたり、交代で店番をしたり、イベントを開く。小さな仕掛けが、棚端会議を生んでいます。
一方、移住者が営むカフェは、DIYの温もりとアンティーク家具に包まれ、手作りマフィンが会話をほどよく甘くします。「なぜ移住してカフェを開こうと思ったのか」、開業へのドラマを聞き取りました。
そして夜には、住民が集う共同浴場へ。湯けむりの向こうで繰り広げられる“風呂端会議”は、自由闊達。もし大学のサテライトキャンパスができたら? 研究発表より先に、まずは湯船でディスカッションが始まるかもしれません。
今回のフィールドワークで学んだことを活かし、次回は春休み期間に滞在予定。そこで町を応援するような提案を行います。
地域を学びたい学生が
1日から参加できる
フィールドワーク

いしかわサテライトキャンパス
自然と文化の息衝く石川県で、とことん学ぶ体験を。
温泉地、城下町、里山、漁港、農村、商店街を歩き
わくわくするような学びを掴み取ろう。