我谷盆とは?山中温泉の鶴仙渓を巡る観光モデルコースから、モノづくりの将来を感じる。

我谷盆とは?山中温泉の鶴仙渓を巡る観光モデルコースから、モノづくりの将来を感じる。

国土の約7割を森林に覆われた日本には、独自の木製品を生み出した地域があります。山々に囲まれた石川県加賀市山中温泉を中心に、近年普及しているものが「我谷盆(わがたぼん)」です。おつりを渡すコイントレイや、お茶の時間を楽しむティートレイとして様々なところで見かけるようになりました。

茶産地でもある加賀市には、「山中漆器」や「九谷焼」といった伝統工芸が根付いています。そこに我谷盆も肩を並べ、現代の喫茶文化に厚みや奥行を持たせるには、どのような取り組みが必要でしょうか?

我谷盆のレパートリーを充実させるにあたり、その特徴を最大限に活かした品物を作る活動が広がりつつあります。そしてモノを作りたい人、売りたい人、買いたい人とのネットワークを広げるためにも、我谷盆についてお伝えするプログラムを設けました。

内容町を歩きながら、モノづくりの歴史や文化をご紹介します。
訪問先石川県加賀市山中温泉のゆげ街道や鶴仙渓
参加費無料
時間1~2時間(スケジュールに合わせて調整します。)
備考飲食をご希望の方は、実費をご負担いただきますよう宜しくお願いいたします。(任意)

GUIDE PROGRAM

モノづくりの将来を感じるモデルコース

⒈菊の湯 ー 温泉と工芸のはじまり。

⒉鶴仙渓 ー モノづくりの舞台となった河川流域。

⒊ゆげ街道 ー 店と道が、モノを世の中に送り届ける。

STORY

山中温泉の鶴仙渓と工芸を育んだ流域

工芸文化の母胎となった山中温泉は、約1300年前に開かれ、武将に守られながらも、僧侶や俳諧師、船乗りといった人々を癒してきた名湯です。この温泉街は谷間に形成されており、すぐそばに深い渓谷が刻まれています。物見遊山に最適な清流沿いは、「鶴仙渓(かくせんけい)」という呼び名で親しまれ、川には檜造りのこおろぎ橋、石造りの黒谷橋、紅紫色の鋼鉄製のあやとりはし等が掛けられています。春から秋にかけては、赤い傘を立てた川床でお茶などを味わえるようになっています。

この鶴仙渓を遡った先にある上流域は、古くに工芸文化が胎動したエリアでした。山間部は資源の宝庫でもあったため、16世紀後半には、木から器を挽く職人集団が移り住み、漆塗りや蒔絵の技術も受容し「山中漆器」として発展していきました。また17世紀中頃には、「九谷焼」の発祥地も誕生しています。その原料となる石を鉱脈から掘り出し、磁器をつくる窯も築かれました。

このように山中温泉は工芸の母胎となり、モノづくりの技術を育んできた歴史があります。その技術は、やがて川伝いに伝播し、より下流の地域にも定着しました。まさに工芸の出発点であり、文化の通り道としての役割を果たしていました。

そして漆芸や陶芸を育んだ上流域で作られていた、もう一つの道具が、かつて幻と消えた我谷盆(わがたぼん)です。

SPECIAL ITEM

我谷盆とは?水底に消えた村の芸術品は、木造建築の断片から生まれた。

我谷盆の最大の特徴とも言える、波うつ木目。穏やかな海のような細波模様は、栗の木を鑿(のみ)で彫ることで生じます。彫刻刀の痕が生み出すストライプは、武骨で猛々しい印象さえも与えます。

その歴史を紐解くと、風前の灯火からの復活劇が浮かび上がってきました。本来、我谷盆は木造建築の断片から生まれています。実を言うと、もともと材料となっていたのは、屋根の端材です。その産地であった村の主な生業は、木端葺き屋根材の生産、林業、炭焼きでした。屋根材であった栗の木、その端材から彫られた我谷盆は、あくまでも副産物でした。手彫りのため、量産されることなく細々と流通していたのではないかと思われます。

そして木端葺き屋根から瓦葺きへと建築様式が移り変わっていくなか、木端の生産も減っていきました。それと同時に我谷盆も衰退し、掘り手も技術も失われていきました。発祥地となった村も、ダムの底に沈んでいます。

しかし、たとえ水底に沈んだとしても、村外へ流通していた我谷盆が存在証明となって、歴史は語り継がれてきました。そして鑿の彫刻に魅了された人々が復活させ、今日では漆器販売店やギャラリーなどで日の目を浴びる存在となっています。

当初は建築文化の切れ端から生まれた我谷盆は、時代とともに衰退したものの、残された我谷盆が火種となり、新たな品が作られています。これからは、このシンプルかつ奥深い品を、陶磁器や漆器と組み合わせ、さまざまな化学反応を起こしていきたいと考えています。

PROJECT

我谷盆×漆芸×陶芸による喫茶スタイルを生み出す

石川県加賀市は江戸時代から続く茶産地でもあります。大聖寺藩二代藩主・前田利明は藩の産業開発として、京都から茶の実を取り寄せ、茶栽培を命じたのが始まりです。茶畑の広がる打越町では棒茶、煎茶、紅茶などが作られており、製茶工場からは芳しい香りが漂っています。また茶道も盛んで、愛好家のあいだでは稽古や茶会が繰り広げられています。

こうした喫茶文化と結びつくように工芸品も出回っています。九谷焼では急須や湯呑、ティーカップなどが作られ、山中漆器では棗や菓子器、茶托などが流通しています。そこに我谷盆も肩を並べ、これらの茶器を足元から飾り立てる品を届けるためのプロジェクトを始めます。

鑿による彫刻を最大限に活かしたティーセットを開発するためにも、多様な価値観を交換したいと考えています。まずは我谷盆を作りたい人、使いたい人、売りたい人とのネットワークを充実させることを目指します。我谷盆について学び、一緒に文化をつくっていく仲間を募集しています。

PROJECT

木製品を軸に、森に活路を見出す。

そして目指すべきもうひとつの方向性は、森を守ることです。我谷盆の材料となっている栗の木は、里山にも生えている馴染み深い存在です。本来、山林は素材の供給源として、民具や建築、炭や食料などの生産を支えてきました。しかしながら地方の山間部は、少なからず管理放棄された山を抱えています。そこで日本の樹木を活かした木製雑貨を流通させることで、放置山林に眠っている財にスポットライトを当て、森を活かす方法を示せます。

これからつくる喫茶スタイルは、森を守ることに繋がるものと想定しています。その実現には、山で採れた素材を活かすことで一歩近づけます。ある種の木製品を軸に、森と文化と経済を巡らせるためにも、まずは我谷盆についてを学べるプログラムをご用意しました。活路の見失われた山林を、素材の宝庫に変えることを目指していきます。

参加の方法

1.お申し込み
お問い合わせフォームより「参加希望日」「人数」「興味関心」などお知らせください。

2.担当者から連絡
予約日時、集合場所などに関する確認メールをお送りいたします。

3.当日
ご予約時間になったら催行を開始します。

内容町を歩きながら、モノづくりに関する歴史や文化をご紹介します。
訪問先石川県加賀市山中温泉のゆげ街道や鶴仙渓
参加費無料
時間1~2時間(スケジュールに合わせて調整します。)
備考飲食をご希望の方は、実費をご負担いただきますよう宜しくお願いいたします。(任意)
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