おわら玉天ひとすじ31年。和菓子屋やけど、これしか作れん。
  林 雅一さん[おわら玉天本舗]
おわら玉天本舗 八尾の菓子職人シリーズ

八尾町の代表的なお菓子といえば、玉天。このお菓子を町内のお菓子店に広めたのが、この店の本家である。
日々「おわら玉天」づくりに勤しむご主人は、クラシック音楽やゴルフ、インターネットショッピング、海外旅行など、実に多趣味な方でもある。


おわら玉天本舗
〒939-2354 
八尾町東町2227
TEL 076-454-3073


風の盆の本番は午前中で売り切れる
 うちは売上の90%以上が『玉天』ですね。夏場だけじゃなく、年間通じて売ってます。むしろ、風の盆の時には需要に供給が追いつかないものですから、売り切れたら即・店閉めになります。風の盆の時は、おそらく八尾で一番早く閉まる店でしょうね。
 9月1日は、午前中には確実に無くなりますね。睡眠時間削って目一杯作ってるけれども、手づくりだから絶対量は作れない。タマゴ泡立てるのは多少機械でやりますけど、仕込みというか、カッティングから焼き上げるのも全部、手作業ですから。


泡立て方の調節が難しい
 難しいポイントは、その日の気温や湿度によって固まり方や、泡立ち方が違うこと。絶えず横で見てないといけない。タイマーを設定して何分で、みたいに簡単にはできない。
 特にタマゴの泡の立ち具合は、横で砂糖を煮詰めてる作業の進み具合とバランスを取りながらやっていかないと。片一方が煮詰まってないのにこっちが泡立ちすぎるとか、煮詰まったけどこっちが泡立たないとかね。
 その調節は自分でやらないといけない。他の人はできないな。1ロットごとに微妙に違うのが分かるもの。泡立てが多すぎたりしてこれは失敗したなというのは、焼き上げで膨れても、冷めた時にしぼんでしまう。玉天の断面が真っ直ぐじゃない。窪んじゃう。
 同じ100個分の材料を入れて90個しか出来ないこともあるし、110個出来ることもある。そういうのは形は一緒だけど質量が全然違ったりする。

玉天ひとすじに
 他のお菓子は一切作っていません。作ったこともありますが、ほとんどのお客さまが玉天を指名していらっしゃるもので。これだけで商売しているのは、おそらく八尾で一軒だけでしょうね。初代からずっと玉天です。私が3代目だから、百年くらいかな? 私が覚えたのが中学生の頃だから、40年近くやっていることになりますかねぇ。

秘伝の粉で独自の味を
 うちの初代が林盛堂さんの家の次男坊で、私の聞いてる限りでは、その爺さんが外へ修業へ行って淡雪のつくり方を見て、それをヒントに玉天を考えたとか。だから根本は淡雪です。淡雪はタマゴの白身しか使わない。でも、黄身を捨てるの勿体無いから、何かして黄身を生かせないかと考えた時に、「あ、表面に塗れば良いんだ」と。
 でも、簡単には玉天の表面に塗れないんだよね。そこで、粉を付けてやってみたら、「うまくいく」と。その粉が秘伝(笑)。

戦時中に作り方が広まった
 それがなぜ八尾の町に広まったか言うと、戦時中は砂糖とか小麦粉とか配給だったもんで、菓子屋は自分のところで勝手に菓子作ったらダメだから、一ヶ所に固まって一緒に作ろうとなった。
 当時は玉天は有名な菓子じゃなかった。柳沢のおじいちゃんと、うちのじいちゃんが2人で商売をしていて、小さな地方の駄菓子だけど、「これは苦労して作ったんだから、人に教えないでおこう」と決めていた。だけど、結局共同で菓子づくりをしていた時に八尾の町に広まってしまった。
 現在の柳沢さんの『玉風味』とうちの『玉天』でも全然違う。どこが違うかといわれても説明に困るけど、その他のお菓子屋さんも含めて、固いものとか柔らかいものとかがあって、それぞれ違いがある。


全国的にも珍しいお菓子
 玉天みたいなお菓子は、富山県にしか無いと思うんですよね。私の知る限りでは全国にも無いですね。京都なんかにはいろんなお菓子があるけどね。白身だけ使ったふわっとしたお菓子はあるけれど、でも乾燥させた「雪渓」とかのかたちですよね。「淡雪」は、その羊羹的な感じだし。
 引き合いで送ることもありますよ。ある京都の料亭で、全国のいろんなお菓子を出しながらお食事をされるところがあって、その支店も含めて4ヶ所くらいに、横浜、東京と順番に送りました。そこで食べた人が「これ、美味しいから送って」と注文があって送ったことがありましたね。

売れ筋土産ベスト3にランクイン
 うちの一番のお客さんはお寺さんかな。「お遣いもの」に使われます。そうすると、またもらったお寺さんから注文とかが入って…。お寺さんていうのは、いろんなお菓子を貰うことが多いみたいですね。
 今までに送ったことのない地域は、たぶん沖縄がありませんね。送料が高いのが理由ですかね。
 富山のキオスクにはたくさんお菓子が並んでいるけど、おかげさまで売れ筋ベスト3に入っいます。自分でインターネットで調べました(笑)。


原料も時代に合わせて
 味は、時代によって変わっているでしょうね。自分の代になってもやっぱり変わってますよ。原料が変わったのも理由のひとつですね。特に、寒天は昔、角天といって棒状のものを使っていました。今はテレットっていう粒状の寒天になっています。
 棒状の寒天をなぜ止めたかというと、寒天そのものの出来不出来の差がものすごく大きいんです。粒状だったら品質が安定してるから。あと、棒状の寒天は付着しているゴミをキレイに取ってから使わないといけない。それに、ものすごく手間取るんだよね。軽いものだけど、棒状の寒天200本分といったら結構嵩張りますしね。
 タマゴは県内産だね。

八尾の四季を謳ったラベルで
 一個一個の包み紙に、春夏秋冬の包装があります。デザインもここ何十年かは変えていませんね。以前はオブラートで包んでたんです。僕が21歳くらいまでは全部手で包んでいました。
 店は築70〜80年。井波で彫った「おさランマ」は、細い棒で中をうまく支えるように組んである。相当高かったらしいから、火事になったらこのランマだけは外して逃げないとね。お店にいらしたら、ぜひ見てやって下さい。

お店の外観。





人気の『玉天』。風の盆の本番3日間は、午前中で売り切れる。





個包装の一つ一つにオワラの一節が書かれていて、見るのが楽しみ。



ふわっとした口当たりが独特。





次の「八尾の菓子職人」を見る

水上水月堂


山田屋


林盛堂


うす和


おわら玉天本舗


小蔵亀寿堂


花島おわら堂


他ジャンルの「手仕事・職人・ものづくりの心」を見る風便りWeb版トップへもどる