お菓子には人間が出ますね。試されてる気がします。
  林 昌幸さん[林盛堂 五代目]
林盛堂(りんせいどう) 八尾の菓子職人シリーズ

八尾町で一番古い和菓子屋。
今では有名な「おわら玉天」を考案したのもこの店である。「玉天」だけではなく、素材、味など”独創的”で”本物思考”のお菓子が多く、どこか懐かしく古典的な物が揃っているのが、この店の特徴。


林盛堂(りんせいどう)
〒939-2376
八尾町福島3-8
TEL 076-454-2451


昔ながらの材料から作る
 八尾のお菓子屋さんでは一番古いです。創業は江戸の末期から明治の初期頃。昔ながらの材料しか使わないのが、うちのやり方です。
 20年ほど前に誕生した『ひしきりこ』は、小豆の粉を使ったお菓子で、この“小豆の粉”も市場から消えてしまっていたもの。だから、うちでは石臼で挽いて、材料から作っているんです。昔ながらの材料がなければ材料から作る。その石臼の機械も、20年前に町内の宮大工さんに頼んで作ってもらいました。
 一旦熱が入る粉末機とは違い、石臼でゆっくり挽くのは一番風味を生かす方法。10年くらい前からはそば屋辺りでも見かけますが、その頃は石臼が自動で回るって機械はなかったんです。

小豆が香る素朴な『ひしきりこ』
 口に含むと小豆の香りがきちんとする、いわば食通好みの懐かしい甘さ。香ばしい香りが生きています。
 元々八尾に「ひし」っていう駄菓子があったことをヒントに、桂樹舎の吉田桂介さんと、茶道の宮田宗芳先生に監修に入っていただいて開発したんです。最初は機械もないから、手で挽いて作って、いよいよ売り出す時に、「もう駄菓子レベルの味じゃない。デザインにも品と風格を付けよう」ということで、桂介さんが李朝の朝鮮型を一本くださった。型押しした模様が切子(ガラス)のようだから、『ひしきりこ』と、これも桂介さんの命名。
 これだけのデザイン、これだけの味のものを立ち上げたってことに感心しますよね。八尾に優秀な人間がいっぱいいるってことですよね。

茶道家からの評価をいただいた
 でも、この『ひしきりこ』、浸透するまで時間がかかったんです。最初は全然売れなくて、「止めようかな」って思ったらしいです。でも「10年、20年経ったら売れるようになるから待て」って言われて我慢して、12、13年経った頃、お客さんがバッと来だした。茶道の方たちの目に留まって、「探してたのはコレだ!」って言いながらお店に入ってきた時分から、ちょこっちょこっと売れ始めた。
 宮田先生がお茶の総本家に持っていくときは、いつもお持ちくださって、先生も絶賛してらっしゃるそうです。5年くらい前に黒部で全国茶会があったときも、富山からはこれを選んでいただきました。
 爆発的に売れたものは萎むけど、逆にジワジワ来たものは、売れたら根強いです。


当店ならではの味を
 皆さん“変わったもの”を探しておられますが、大体、どこかで食べたことがあるものが多いから、「ここならでは」のものを提供したい。
 「これはどっかで食べたことがあるけど、ここのは相当ウマイぞ」か「全く世の中に無い」ものを作るしか、これからは通用しないと思うんです。
 うちには小豆の粉という材料がありますから、これを今度は焼いて煎餅にしたのが『かた板』。これも吉田さん命名。
 パキッ!と歯ごたえがかなりあって、噛めば噛むほど味が出る。今の人は「噛む」ことから離れすぎてるから、それが良いんです。初めて食べるけど懐かしいような味わいで、日本人の伝統的な文化から出てきたものだなぁと思っています。
 さらに小豆の粉を、玉子ぼうろみたいにしたのが、「雛ぼうろ」。こっちの方が万人受けするかな。

棟方志功デザインの『玉天』
 売れてるのは玉天ですね。むしろ他のものの方がオススメで、特にお勧めしてるわけじゃないんですが、夏場はもっぱら玉天になります。
 うちの玉天のラベルのデザインは、実は棟方志功さん。志功さんが「おわら」を彫ったことがあるって、たぶん誰も知らないんじゃないかな。志功さんが唯一彫った「おわら」です。民藝の関係で、桂介さんを訪ねて八尾には結構来てたらしいんです。うちのおじいちゃんが越中の画壇みたいなのを開いていて志功さんと友だちだったので、お店にも来てたんです。玉天はよく食べておられました。柳宗悦先生も。


何時間もかけて手作業で
 今
秋口に取材)の時期だと「栗しぼり」がオススメです。秋から冬までの期間限定品。きんとん風のお菓子で、普通は増量で白餡入れたりするけど、これは100%栗。
 剥いた栗からゴミ(皮を剥く時に出る細かい破片)を目で見て一個一個見つけ、何時間もかけて手作業で取り除いていく。食べた時の舌ざわりに粒々感を残すため、裏漉しによるゴミ取りはしない。だから量は多く作れないんです。
 お砂糖も、栗の甘味を引き立てる程度しか入れていない。ただし砂糖が少ないだけに、日持ちがしないから早めに召し上がっていただきたいですね。うちは基本的に、お菓子は「ウマイかマズイか」しか考えてなくて、日持ちのことをあまり考えていませんね。

吉田桂介さんに学びに行く
 吉田桂介さんのところには、「今のうちに学べることがあれば」と思って結構通ってます。うちは、お菓子を作ったらぜんぶ桂介さんに「ちょっと味見てください」って持っていくんです。
 おじいちゃんと同級生で親しかったらしいんで、僕も勝手に家に入っていきます。それで、買った篭や皿を見せに行ったりして、感覚を教えてもらうんです。ようやく「ちょっと芽が出てきたぞ」って言われてます。僕は年賀状も彫って持っていってまして、「ここもうちょっと丸くしろ」とか、「ここはこういうデザインにしろ」とか書いてくれるんで、「じゃあ、この原本いただいていきます」なんて。
 お菓子は色とかも含め、全部評価していただく。優秀な人が参謀に付いてくれるとやりやすいですよ。「うわ、また難しいこと要求してくれるなー」という時もありますけど。



お店の建物は、八尾の山間部から古民家を移築したもの。店内の根曲がりの梁もトチの木だから、古い時代のものです。



パッケージデザインは桂樹舎の吉田桂介さんによるもの。




小豆の素朴な香りが口中に広がる『ひしきりこ』。お茶席にも喜ばれている。



『かた板』は、噛み応え十分。噛めば噛むほど小豆の香りが。



『鄙ぼうろ』



棟方志功が彫ったおわらは、お店のショッピングバッグに。




期間限定
『栗しぼり』


※こちらもどうぞご覧下さい http://www.hokurikumeihin.com/rinseidou/



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