美味しい石川
いしり  



能登の新鮮な海の幸でつくる魚醤を世界の味に
JAPANブランド「いしり」


奥能登の知られざる味を世界へ

 いしりとは、石川県の奥能登地方に古くから伝わる魚醤油。地域の伝統的料理等に使われてきた、この奥能登独自の調味料を、県内、国内から世界の料理界に向けて発信しようという取り組みが、いしりのJ―ブランド(ジャパンブランド)づくりである。

独特な風味が料理の味わいを豊かに

 いしりは、国内では一部の料理人らに注目されはじめており、行列が並ぶ都市部のラーメン屋にはスープにいしりをしのばせている店も多いといわれる。ただ、家庭料理などではほとんど馴染みがないマイナーな調味料だろう。
 この調味料の知名度を高めた重要な一人が、石川県出身の料理人・道場六三郎氏。1990年代のテレビの料理対決番組で和食界の勇として一躍名を馳せた氏が、番組内で調理をするシーンに度々いしりが登場し、独特の風味や豊かな味わいを生み出す調味料が能登に存在することが全国に知られるきっかけになった。

隠し味として威力を発揮

 その香りはエスニックで、さまざまな料理の隠し味として威力を発揮する。また、素材の旨味を引き出し、料理を奥深い味わいに仕上げてくれるのがいしりの特性でもある。
 クセのあるいしりの香りは、魚介が原料という印象とも相まって苦手意識が先にくる方もいるが、実はこの香りが熱を通すことで一変する。
 特に、焼きものの料理に使うと大いに食欲をそそる香りが立つ。これが逆に、「クセになる」調味料といわれる理由なのだ。先の道場氏のお店でも、いしりを使った石焼き等が人気料理として大いに喜ばれている。その時の焼いたいしりの香り高さが、味わいへの期待を高める大きな要素となっているようだ。

香り付けがいしりの得意技

 石川県にゆかりのある中谷健太郎氏も、いしりに注目している一人。以前から魚醤に注目していたが、石川県へ醗酵食を訪ねる旅をして以降、九州・由布院の亀の井別荘では宿泊客のもてなしに日常的にいしりを使うようになったという。ここでも焼きものを中心に、香り付けとしていしりの持ち味を生かし、和食の味にアクセントを加えている。

抗酸化物質やタウリンで機能性にも期待

 いしりの魅力はそれだけに留まらない。機能性の面でも注目すべき成分が多いことが、県の工業試験場などの協力を経て分かってきた。
 抗酸化性を示す物質を含む他、タウリンや低分子のペプチドも多く、また血圧上昇抑制物質の存在も確認されている。同時に、旨みの素である遊離アミノ酸が非常に多く含まれていることが分かり、料理の素材の美味しさを引き出すいしりの働きが、科学的にも裏付けられた格好だ。

新鮮な原料が味わいの違いに

 能登は海流の交錯する好漁場で、豊富な海産物に恵まれている。
 世界の発酵食品に詳しい東京農業大学の小泉武夫教授も、いしりにスポットを当ててくださっている一人だが、新鮮な魚介を厳選して原料にしているところに、いしりの良さがあると高く評価している。砂糖など他の味付けを足さずに、魚介と塩のみから自然発酵で熟成させるいしりのこうした点は、タイのナンプラーやベトナムのニョクマムなど、世界の他の魚醤との違いであり、魚介類の豊富な能登のアドバンテージである。
 いしりは、原料によって大きく2種類があり、富山湾に面した内浦地区では「スルメイカ」の肝臓、日本海に面した外浦地区では「イワシ」を主な原料としている。各々の地区の漁港で漁獲量の多い魚介類が原料に使われ、能登の中でも地域性を生み出してきた。

いしり料理を能登観光の目玉に

 今後、いしりのイメージアップのために避けられない課題の一つは、それら地域によってさまざまな製法を持ついしりの質のバラつき解消である。現状のいしりの生産者は、零細な個人商店が多く、各々の製法で作っている。
 また、能登や石川県の名物として定着させていくには、郷土料理の目玉としていしり料理を美味しく食べられる拠点を増やしていくことも大切だ。能登への旅の思い出が、いしりを味わった感激と直結するように、さまざまな仕掛けと演出が望まれる。

伝統的に培われてきた優れた日本の食文化を見直す

 料理民宿さんなみの船下さんは、本物の味にこだわる独自のスタンスで、全国に能登ファン、いしりファンをつくってきた。貝焼きやべん漬けなど、奥能登の伝統的な食べ方は郷愁を誘う。しかし、昔から家庭で食されていたいしり料理を、そのまま宿泊客のもてなしにするというアイディアは、最初は周囲の誰もから反対されたと開業当時を振り返る。
 日本の優れた伝統的食文化や、地域の特性を生かした食生活への視点は、平成十七年に成立した食育基本法の中でもクローズアップされている。食を通して日本人が健全で豊かな生活を送るための食育基本法。この成立をバックアップしてきた服部料理学園理事長、服部幸應氏も、いしりへの注目を続けている。

日本人の豊かな食生活の実現に貢献

 失われつつある伝統的な食材の復活も、食育の基本的な考え方の中でテーマとなっている一つ。昔から地域に根付いている食を改めて見直すという意味でも、いしり料理を残す活動は大切だ。
 さらに、伝統的な食を引き続き地域に残す活動が事業として発展すれば、地域の活性化にもつながるとして、服部氏はいしりに期待を寄せている。
 また、食べ方という面でもいしりが貢献できる場面はあるという。いしりにとって大の得意技である鍋料理には、みんなが一緒に食卓を囲んで同じ鍋を突っつくという豊かな食習慣の鍵が潜んでいる。個食化が進む日本で、より豊かな食の実現を考える時、伝統食材の果たす役割は見逃せない要素だ。

奥能登固有の食文化を再評価

 食卓の欧米化を受け、奥能登でも家庭の台所から消えつつあったいしり。今回のJ―ブランド事業では、ニューヨークで展示会に出展(写真左)、いしりを使ったポテトスープなどを振るまい、いしりの魅力をアピールした。ヘルシーな和食人気は海外でも高まっており、これをきっかけに地元でも、地域の固有の食文化を再評価する気運が高まれば、と数馬嘉雄能都町商工会長は期待をかけている。
 「いしりを通して能登を知り、本場で本物を味わいたいと思う旅人が増えてくれれば素晴らしいですね」。
 そのためにも、今後能登一円で協力し合い、本物のいしりの味を伝えていく活動がますます重要だ。



「JAPANブランド」とは
地域特性を活かした既存製品の魅力・価値をさらに高め、全国や海外のマーケットにも通用するブランド力を確立すべく、マーケットリサーチ、専門家の招聘、新商品開発・評価、展示会参加、販路開拓等の取組みを行う対象プロジェクトに対し、国(中小企業庁)が総合的に支援を行う事業です。
















能登の醸しブランド発信事業推進委員会
(内浦町商工会・柳田村商工会・能都町商工会)
【事務局:能都町商工会】

〒927-0433 石川県鳳珠郡能登町宇出津ト44-4
TEL.0768-62-0181 FAX.0768-62-0277
いしりホームページ(能登の醸しブランド発信事業推進委員会)
http://www.noto-net.jp/ishiri/

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