能登杜氏物語(サイトタイトル)
インタビュー(メニューボタン-1) 酒蔵分布(メニューボタン-2) 能登杜氏とは(メニューボタン-3) 関連書籍(メニューボタン-4) リンク集(メニューボタン-5)
酒造りの出稼ぎ者の多かった地域のひとつ小泊地区の出身。夏場は漁業、冬は2つの酒蔵で酒造りを行っている。明治時代から出稼ぎ者に仕事を斡旋して能登杜氏の発展にも影響した口入業の「能登屋」のようすなどを覚えている、貴重な存在。
丹波杜氏のもとで酒造りをスタート
 最初に酒蔵に行ったのは、24〜25歳の頃です。それまでは違う仕事をしていましたが、以降はずっと酒造りの仕事を続けています。最初は三重県に出かけ、丹波杜氏のもとで仕事をしました。それからあちこち回り、越前杜氏の下でも仕事をしました。その後、能登杜氏のもとで仕事をするようになりました。
 昔はこの辺りの人は、伏見などへたくさん行っていたので、私もそういう知り合いの人から、「誰かおらんか?」と声を掛けられ、最初の丹波杜氏のもとに行きました。その頃は、地域の多くの人が出稼ぎに出て行っていました。

明治時代からの酒屋仕事あっせん所
 滋賀県大津に、能登屋(のとや)という、今でいう職安みたいなところがありました。皆そこで紹介されて、あちこちの酒蔵に酒造りに行っていました。仕事先は主に酒屋でしたが、その他の仕事もあったようです。祖父や親たちは、そこでいろいろ知り合いができたと言います。親も酒屋(酒蔵)へ行っていました。百姓をしながら、いろいろな縁で出かけていました。

能登杜氏の跡を継ぐ
 銘柄の「大慶」の名前は、地元では大漁の時に「大慶な」と言って喜ぶところから名づけたということです。おめでた 最初のなりたてはホントの下っ端やったから、給料は安いもんやった。杜氏は何倍ともらっていた。杜氏になれば、給料も違う。
 小さい酒屋さんでの仕事は、あらゆる仕事を全部やるので、何年か行くと工程などが分かるようになります。大手に行くと、一つの仕事だけを担当するので、ちょっと全体は覚えられん。
 私が最初に杜氏になったのは20年ほど前です。三重県津市の倉田酒造でした。その頃、能登から出かけていた杜氏さんが辞められて、その跡を継ぎました。そのうちそこもだんだん造りが少なくなって、「休んだらどうか」となり、杜氏組合から今の蔵を紹介されました。

普段は夫婦で漁業を
 杜氏として仕事に行くのは、11月から3月ぐらいと短い期間です。1軒では少なく、期間も短いので、2軒掛け持ちしています。1軒は富山県滑川市の千代鶴酒造です。正月までそこにいて、その後にもう1軒、小松市の東栄松商店に行っています。こちらは大吟醸も造っている蔵です。石蔵のきれいな蔵で、お客様が蔵に来られます。
 普段は漁業をしています。百姓は辞めてしまって、今は漁業一本。漁業は、もずくやワカメ、魚を少し獲ったりしています。零細な沿岸漁業ですね。夫婦で舟に乗って漁に出ています。年金暮らしの75歳。健康のためにも仕事をしています。仕事をしていると、元気でいられます。

私にとっての酒造りの魅力
 酒造りの仕事で私が一番面白いのは、大吟醸を造ることでしょうか。「今年はこうしよう、ああしよう」と考えます。酒造りはスパンが一年に一回なので、「今年もこうやったなあ」とだいぶ楽しみになりました。
 酒造りの中でも吟醸は面白いです。と言っても、吟醸は心配の種なんです。普通酒であれば、慣れれば、大体のことをやっておけば出来ていきますけれど、問題は吟醸です。鑑評会も念頭に置かざるを得ません。
 東栄松商店(銘柄は「神泉」)は、現代の名工として全国的に有名になった農口杜氏さん(鹿野酒蔵)と同じ管内の蔵なので、大変です。生き残りのためにも高級酒が多いです。地元の鑑評会でも選ばれていますが、やはり鑑評会に入らないとダメだね。「農口さんに負けないでやろう」と社長も仰っています。農口さんはNHKにとりあげられたり、全国放送だからやはり影響は大きい。

小泊は多くの杜氏を出した地区
 出身は珠洲の小泊地区です。小泊は、金沢大学が旧小泊小学校の廃校校舎を利用して、能登学舎を運営しているところです。子どものときあの学校を出て、今も能登学舎の下の辺りに住んでいます。その能登学舎に来ている学生たちが、確か一昨年かな、取材に来まして、漁師仕事のことや酒造りのことを聞いていって、内容をまとめて本にしてくれました。
 かつての小泊には、杜氏になっている人が多かったのですけれど、今は私一人です。杜氏でなくても、酒造りの手伝いをしている人自体も少なくなってきていて、寂しいですね。
(インタビュー/2011年5月) 
酒造場名/ 東栄松商店 [東酒蔵(株)
石川県小松市野田町丁35  TEL 0761-22-2301 FAX 0761-22-2300
http://www.sake-sinsen.co.jp
【銘柄】 神泉
酒造場名/ 千代鶴酒造 合資会社
富山県滑川市下梅沢360  TEL 076-475-0031 FAX 076-475-0040
http://www.chiyozuru.com
【銘柄】 千代鶴


INTERVIEW (インタビュー)
櫻田 博克
坂口 幸夫
浦上 隆作
中道 隆三
柳矢 健清
前 良平
吉田 正
畠中 利雄
山岸 正治
下祢 鉄郎
榊谷 和生
中倉 恒政
向 守三郎
坂頭 宝一
道高 良造
能登杜氏物語 NOTO-TOUJI Story お問い合わせ/珠洲の元気創造まつり実行委員会